第四十四話 アレリオン33S進水

ついにと言いますか、やっとと言いますか、ニューモデルアレリオン33Sが造船所があるアメリカ東海岸のロードアイランドにて進水しました。



このスタイル、どう感じられるでしょうか?ちょっとクラシックな魅力を漂わせながら、最新の走りを最新の乗り方で走らせます。アレリオン28のビッグバージョンですね。だいたい想像はできます。

従来、セーリング性能をどうこう言うヨットというのは、レース用と相場が決まっていました。しかし、ここでは新しい考え方が導入されています。レース用のヨットではありません。セーリングを遊ぶ為のヨット、それにはやはり性能が高い方が良いし、その高い性能をいかに簡単に動かす事ができるか?誰でも、気楽に高い性能を遊ぶ事ができるか、それがテーマという事です。

もちろん、もっとスピードを強調したデイセーラー等も最近では出現してきましたが、でも、このアレリオンのコンセプトは、楽しい、面白い、簡単、でありながら、高い帆走性能という事です。セーリングを満喫するに、レースである必要は無い。レーサーのように、スピードが全てではありません。

例えば、彼女とピクニックセーリングをしているしましょう。遅いヨット、重心の高いヨット、波に激しく叩いたり、そういうヨットより、滑らかで、スピードも出て、強靭なハルを持つヨットの方が、実は楽ですし、安心でもあり、楽しい。スポーツカーと同じです。それをひとりで簡単に操船できるようにするのが、最大の魅力。これからの新しいセーリングの有り方として、広がっていくと思います。まさしく、一般ユーザーの為のスポーツカーと同じなんだろうと思います。

上記モデルは今一号艇が進水したばかりですが、既に一号艇が完成する前から3艇の受注があるとか。同じコンセプトのアレリオン28とかに乗りますと、実に簡単だし、マリーナからの出し入れも、セーリング自体も実に簡単です。それでいて、滑らかさ、加速感が感じられ、例え、本気モードのヨットマンで無くても、誰でも、このセーリングを楽しむ事ができます。通常のクルージングヨットより、遥かに簡単に操船できるのです。でも、セーリングの質は違います。ピクニックセーリングでさえ、気分は違います。

要は、キャンピングカーを求めるか、スポーツカーを求めるか?どっちが楽しいか、面白いか?そういう違いを鮮明に打ち出してきました。これはマーケットへの問いかけであります。これは時代の流れとして、当然かと思います。世界のヨットはそういう時代を向かえつつあると思います。

車と違って、ヨットには車のセダンにあたるのは無い。キャンピングカー的なヨットか、レーシーングカー的か、スポーツカー的かの三種類。その中で、デイセーラーは一般向けのスポーツカー的。

クルー不要で、シングルで、簡単で、高性能で、というところが従来とは違うわけです。二人も三人も動かすのに必要なら、これはなかなか難しい。学生のクラブなら簡単でしょうが、大人社会では、そういつも思う通りに集まるわけではありませんからね。

高性能スポーツカーといっても、ツーシーターの二人乗りというわけじゃありません。大勢乗ったら窮屈にはなるでしょうが、それはどんなヨットでも同じ事です。セーリングをそんなに深く、突っ込んでという方では無いにしても、普通に操船して、ヨットが滑らかに走ってくれたら、気持ち良いですよね。一人の時だろうが、ゲストが居る時だろうが、走る物が、スムースに走ってくれれば、誰だってその方が気持ちが良い。そういう考え方なんです。

もちろん、出たい人はレースに出ても良いし、シングルでセーリングを求めても良いし、彼女とデートセーリングも良いし、家族とのファミリーセーリング、ちょっと向こうの島に渡ってという時だって、セーリングで行きたくなるでしょう。エンジンじゃ無くて。そこが魅力なんですね。そういうヨットなら、エンジンじゃ無くて、セールを使いたくなるんです。この違い、フィーリングの違いは大きいかなと思います。

このヨット、バラスト比41%、排水量に対するセールエリア比 24.4もあります。それに上部を
軽くする為にカーボンマストを使います。尚、写真にはジブブームがありませんが、日本仕様では
ジブブーム、ライトエアーイクステンダーは標準です。コクピットから出なくても、ダウンウィンドまでそのままジブとメインの2枚で効率良く走る事ができます。

 

ヨットがレースか旅かとふたつに分けてしまうと、ヨットは難しいもので終わってしまう。そんな難しいものをする人は当然少ない。ですが、ヨットをもっと簡単な海遊びのひとつとして捉えますと、もっと多くの人達が参入できます。もちろん、お金はかかる。でも、まずは、気持ちのハードルを下げることが必要で、ヨットというと、簡単な海遊び、ピクニックセーリングがまずイメージとして浮かび上がるぐらいなればと思います。そうしたら、難しいイメージ、怖いイメージを持つ人が少なくなるんじゃないか?そして、楽しい、面白いのイメージになりはしないか?簡単なら誰でもしようかという気になれるかも?

ヨットが好きだからヨットをする。難しいとかいうイメージを払拭して。考えてみれば、車の運転の方がよっぽど難しいと思います。他の車は行き交う、自転車は来る、人だって飛び込んでくるかもしれません。それに決まった道路しか走っちゃいけません。たくさんの道路標識をみて、瞬時に判断して。ヨットの方が遥かに簡単なのです。ただ、イメージですね。難しいというイメージを持ってしまった。この際、そんなイメージを捨ててしまおう。陸上生活に慣れた我々が、ちょっと慣れて居無いだけの話です。

次へ       目次へ