第四十話 ひとりじゃ乗りません!

これならシングルハンドも簡単にできますよ。と申しましたら、ひとりじゃ乗りませんと言われました。これまではボートに乗ってこられた方で、ヨットを始めようかな、と考えておられます。最近は、そういう方々が少しづつ増えてきているような?

ひとりじゃ乗りませんというのは、ゲストと一緒なのか、クルーと一緒なのかという事が問題で、私は大半の方々が、家族や仲間と一緒に遊びたいと考えておられるけれども、それは必ずしもクルーでは無いという事かと思います。クルーは経験者、一緒に操船をする人。ゲストは未経験者、操船に対する手伝いはするけれども、知ってるわけじゃない。

クルーと一緒に乗る以外は、操船にあたってはシングルハンドと同じ事。ひとりで乗らなくても良いのですが、ひとりで操船できた方が良い事には違いない。そうしたら、誰でも、好きな人を招待できます。

ひとりでできると、どういう状況にも対応ができます。最も自由に遊ぶというのは、誰にも頼らないことではないかと思います。頼らないのは孤立では無く、自由の確保です。来ても良いし、来なくても遊べる。誰かに頼ると、その分自由を失う。遊びたい時に遊べないという事になります。

ゴルフを趣味にする人は多い。ゴルフはひとりでするものでは無い。でも、誘えば、簡単に仲間を集める事ができます。ゴルフ人口が多いですから。それでも、ひとりでやりたい時がある。それで打ちっぱなしに行ったりしますね。

ヨット人口はゴルフ人口に比べれば、遥かに少ないわけですから、それに都合がつくかどうかもありますから、固定のクルーでも居なけりゃ、難しい。まして、そのクルーだって都合があります。

ある方、クルーが転勤でどこかに行ってしまいました。それ以来、動かせなくなってしまいました。それで、売ろうかなと、数年後に決心して、そうこうしているうちに、クルーが転勤から戻ってくるというような話。それじゃあ、売るのをやめとこう。そうなったのですが、未だにクルーは帰って来ず、ヨットも動かないまま。申し訳ないですが、これは喜劇か悲劇か、という感じがします。オーナーは毎年高い係留料金を支払って、オーナーでも無い、お気楽クルーを待っている。本当のオーナーは一体誰なんでしょうか?これに類する話は少なくありません。

あるオーナーは、やはりクルーが居無いと出せない。それで、マリーナに来ては、キャビンでお茶するか、昼寝するか?それが過ぎるとマリーナにも来られない。それでも、船底塗装や係留料金はかかってきます。

何度も言ってきましたが、家族はやがては来なくなる。仲間だって来るのは最初だけ。年に1度ぐらいか?例外的に、ヨットが好きになって、しょっちゅう乗りたがる人もいますが、例外でしょうね?それにそういう人は自分がオーナーになりたがる。で、自分でヨット買って、離れていきます。

つまり、ヨットを本当に心から堪能しようと思うなら、いつでも来てくれるクルーを数人は確保していなければなりません。昔は、乗りたがる人が多かったのいで、苦労はありませんでした。そしてクルーが良く働いた。でも、今日、オーナーはクルーに飯まで食べさせたりと気を使われる。何かが違ってきています。

それならいっその事、ひとりで何でもできるようにした方が良い。それなら、だれを招待しても良い。その方が、楽しみの幅が広がります。いつでも、誰でも、誘う事ができます。そして、ひとりセーリングを覚えると、案外、それも面白いという事に気がつくかもしれません。

ですから、シングルハンドのデイセーリングというのは、最大公約として、最も重宝するものではないでしょうか?

大きなヨットをひとりで、楽に操船できるのなら良いのですが、そうも行かないのが普通です。かといってクルーが?何とも悩ましい問題です。デイセーラーはそんな悩みを解決したヨットです。

という事で、シングルハンドをすすめているわけですが、実は多くの方々がひとりじゃ乗りません。なのだと思います。誰かを誘うにしても、しょっちゅう都合の良い誰かがいるわけではありません。むしろ、都合の悪い方が多い。となりますと、ひとりじゃ乗りませんから、という事になります。

でも、ゲストと一緒ですと、どちらかと言うと、ピクニックセーリングです。もちろん、それも良いんですが、ひとりでピクニックしても面白く無いという事が、動かない原因のひとつではないかと思います。それは確かそうですね。ピクニックなら、ひとりじゃつまらない。同じセーリングでも彼女でも居てくれたら、楽しさは全然違う。

そこで、もう一歩進んで考えていただきたいと思います。ゲストを招待するピクニックセーリングは、年に何回あるでしょう。実際はそう多くは無いと思います。それならそれで割り切って、ゲストを招待しない時、この方が多いわけですから、この時をいかに遊ぶか?ここが重要です。そこを真のセーリングに挑戦してみるというのはどうでしょう。ひとりじゃのりません。では無く、ひとりの時が必ずある。ならば、その時は、ちょっと気合入れてセーリングというものをやってみるか。そんな感じです。

いつもセーリングしているという人でも、真剣にセーリングを極めようというつもりぐらいで、セーリングに集中してみます。すると、きっとこれまでとは違うニュアンスが生まれると思います。それが面白さとなって、自分の心にワクワクする感じが生まれるかもしれません。一回ぐらいじゃ解りませんが、何回かやってみますと、違う何かの感じを持たれると思います。そこを味わってしまえば、シングルハンドでのセーリングが違うものになり、ゲストとピクニックする乗り方、シングルでセーリングする乗り方、使い分けもできるし、ピクニックももっと楽しめるセーリングができるようになると思うんですが?

そして、もうひとつお気楽セーリングの効用というのもあります。

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