第五十八話 エネルギー配分

どこか遠くへクルージングに行こうとすると、自分のエネルギーはナビゲーションや長い航海に消費される。食事も作らねば。そうすると、セーリングするも、細かい部分についてまで、そこにエネルギーを消費する事は無くなる。それどころか、昼夜と越えて遠くへクルージングする場合などは、セーリングにおけるエネルギーの消耗を最小限にしたくなる。よって、セーリングにおいては、そのヨットの直進性が良いとか、波に対して強いとか、そういう事から受ける影響を最小限にする。使うべきエネルギーは他にたくさんあるから。

一方、クルージングでは無く、近場のセーリングをする時、同じようなやり方ではエネルギーが余ってしまう。食事を作るわけでも無く、ナビゲーションに頭を使うでも無く。そうしますと、余ったエネルギーは退屈感に変わるかもしれない。もし、余ったエネルギーを他の情景に使うので無い限り。
それで、余ったエネルギーを退屈感に変えないように、セールトリミングをする。舵操作に気を使う事によって、エネルギーは消耗され、退屈感に変わる事が無い。

エネルギーはありとあらゆる事によって消費される。ヨットの大きさに対する圧倒感から始まり、マリーナからの出港時、セールを上げる時、その時の風の強さに対するスタビリティーの関係、舵操作、セールトリミング、タックやジャイブ、食事をするのにさえエネルギーを使う。エネルギーの消費は何をするにしても使うし、エネルギーをどう使うかが遊びでもある。

大きなヨットで、出港に、セールを上げるのに大きなエネルギーを使うとしたら、セールトリミングのエネルギーはあまり残っていないかもしれない。それで、クルーを擁して、エネルギーの分散を行う。或いは、ただセーリングしている事で十分かもしれない。何しろ、もうエネルギーはあまり残っていないから。

エネルギーは行動のみに消費するものでも無く、セーリング中にいろんなフィーリングが湧き、それを味わっているのもエネルギーの消費になる。だから、味わっているうちは退屈感が出てこない。退屈感が出てきたら、フィーリングを味わっていない証拠。そうしたら、余ったエネルギーを他の何かに向けないと退屈感はもっと大きくなる。

よって、エネルギーの配分を考える。ヨットのサイズ、クルーが居るか居無いか、セールを上げる、舵に対する、セールに対する集中、或いは食事、ゲストとの会話、セーリングのフィーリング、100のエネルギーをどう配分するかによる。

操作しにくいヨットはより大きなエネルギーを要求するし、スタビリティーが低いヨットも同様でしょう。つまりは、自分の面白さがどこにあるかによって、そこを中心としてエネルギーを配分するのが良い事になる。ゲストとの食事や会話を楽しむ時、そこに他の部分で大きなエネルギーを消耗する部分があるとしたら、楽しみを阻害してしまいかねない。

デイセーラーは最小のエネルギーでもってセーリングを可能にする。という事は、余ったエネルギーをいろんな事に使う事ができる。セーリングに集中しても良いし、時にゲストとの会話でも良い。そして、高い帆走性能を持つなら、最小エネルギーで高いセールフィーリングを味わうというエネルギーの使い方もできる。但し、キャビンの大きさは小さい。これはセーリングをする時にはエネルギーをあまり消費させないかわり、もしキャビンで寝泊りするのが目的なら、狭さ故に、エネルギーを消費する。キャビン内での動きが制限されるから。

世の中にはでかいヨットでもシングルで平気に乗っていかれる方もおられるし、小さなヨットでもシングルはできない方もおられる。それはエネルギーの差では無かろうか?エネルギーはクルーを擁する事で補充できるし、操作性の良いヨットにする事によって、スタビリティーが高いヨットによって、消耗の度合いを少なくする事ができる。エネルギーが余れば、それだけ他の事ができる。細かい舵取り、繊細なセールトリム等。余ったエネルギーをどう使うか?そんな事をしなくても、もし、セーリング中のフィーリングが楽しめるなら、それもエネルギーの使い方のひとつ。エネルギーをどう使うか、その配分を考えてみるのも良いかもしれません。

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