第三話 為替

輸入をしておりますと、どうしても為替レートがきになります。ヨットは発注してから、完成するまでに数ケ月を要しますので、この為替の変動が実に怖いわけです。わずかな幅で変動するぐらいなら良いのですが、大きく変動されると、有利にもなれば、不利にも働く事があります。別に為替で利益を上げるのが目的ではありませんので、数年前から、ユーロやドルのままで販売契約をする事にしています。

日本円定価を設定しますと、為替の変動は、その中で吸収しなければならなくなります。という事は、価格に為替変動、輸入の場合特に円安に動いた時には大きな損失となりますから、高めの計算という事になります。為替で儲けなくても良いのですが、為替損失は避けたい。

そこで、米国ドルやヨーロッパユーロのままで販売しますと、お客様に為替リスクを負わせる事になりますが、現代は簡単に外貨預金ができますので、お客様にとっても、為替レートを固定したい場合は、そのヨット分の金額をドル又はユーロで預金してしまえば、為替は固定され、支払いもその外貨のままで支払う事ができます。もちろん、お客様にとって、もっと円高になると考えられれば、時期を待つ事もできるし、すぐに為替レートを固定しても良い事になります。これで、双方、うまくいきます。お客様は円定価よりも安く買う事ができますし、私共は為替損が無くなりますから。

為替の予測はプロでも難しい。誰かの一言で急に上下しますし、実際の経済状況がどうだというのなら、まだ解るのですが、現実は人々の予測で動いてしまいます。つまり、心理戦ですね。経済も人が動かしているのなら、人の心が要因になる。他人の思惑で損するのは嫌ですね。ユーロはヨーロッパ共通通貨ですが、いつかは世界共通の通貨ができれば、こんな心配は無用になるのですが。

さて、銀行を通じて海外に送金する場合は、ニュースで報じられるレートとは異なります。TTSという送金レートというのがあって、銀行は外貨が商品ですから、それに上乗せして売るという事になり、全銀行共通のレートです。米ドルなら1ドルにつき、1円乗っけます。これは仕方ない。彼らもビジネスですから、自分でお金持って行って払う方が高くつきますしね。それに別途送金手数料が取られる。7,500円です。外貨で払うなら1万円の支払いになります。

これが送金とかでは無く、現金でドルを買うとか、売るとかなりますと、銀行のレートはもっと大きくなります。送金というのは、現金が動くわけでも無く、ただの帳簿の書き換えに過ぎないが、現金だと事情は違います。送金ベースなら、現行の米ドルの売りと買いの差は2円ですが、現金なら6円近くにもなる。まあ、彼らのビジネスであります。現金と思えばそうですが、商品とみなせば、仕入れと売りです。それで、世界共通通貨なんかになりますと、送金の手数料だけになりますね。

外貨、米ドルが基軸通貨ですが、昔は日本が最もたくさんもっていたと思いますが、今では米ドルの最大保有国は中国だそうです。なるほど、時代は変わるものです。一方、米国はどんどん印刷して、中国や日本にドルを買ってもらう。今のところは、ドルは世界での取引に使う事ができる。でも、我々はヨーロッパならユーロでやりますが。

でも、待てよ、そんなに外貨準備高がたくさんあるのなら、日々の為替レートに騒が無いでも、貯金したドルがあるので、それから使えば良いのではないか?素朴な疑問であります。預金したレートより、今の方が有利なら、今のレートの方で取引をする。でも、銀行はいつも、現状レートから計算されます。一体、ここのところはどうなっているんでしょうか?銀行は、多分、現状有利ならそれを使って、不利なら溜まったお金を使う。そういう事でしょうか?

まあ、それは兎も角、この為替は銀行のお陰で、送金等が簡単にできます。また、流通にしても、船会社が世界に配船してくれていますから、これもやってくれます。実にありがたい事です。まあ、高いか安いかは別ですが、各部門が仕事をする事で、互いに仕事が成り立っています。それも各社の競争によって、価格下がり、質も上がる。まあ、これも過ぎると駄目になりますが。

まあ、昔は日本円での定価設定をするのに苦労もしたわけですが、この1年でどのくらい為替レートが変わるのか?1年なんて見通せるはずも無い。その中で為替利益もあったし、損もあった。でも、今のところは、外貨のままというのが最も現実的かなと思います。お客様にとっても、私共にとってもです。

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