第十五話 安定性は安心感

最近ではアレリオンやハーバーヨットに乗る機会が多く、その安定性には頼もしさを感じています。仕事柄、いろんなヨットに乗ってきましたが、こういうヨットはそうは無いと実感しています。

風は微風もあれば、強風もあり、突然のブローもあります。そういう時に安定性が高いというのは、そのまま安心感に繋がり、恐怖がスリルとして楽しむ事ができるようにもなる。この違いは大変大きなもので、根底に安心感があればこそ、強風においても楽しむ事ができるようになります。

デイセーラーは標準ではライフラインがありません。それで多くの方々が、少し心配そうに思われますが、全くそういう心配が不要である事を実感しています。

安定性は何も全重量に対するバラスト比のみで測れるものではありません。船体そのものの重心がどこにあるか、そしてバラスト比はどうか、セールエリアはどうか、これらの合計において、重心がどこになるのかが重要になります。

最近の沿岸クルージングヨットは、ご存じの通り大きなキャビンとなり、重心が高くなってきました。30%を切り、22,23%程度というのも結構あります。重心が高くなってきますと、強風では早めのリーフが必要になりますし、ブローにおいても、素早く風を逃がさないと、簡単に大きくヒールしてしまいます。これでは、安心感が薄れてしまう。クルーを従えて、クルーの体重で起こして走るなんてレーサーのような事はしないわけですから。

昨今のクルー不足を考えますと、やはり、ショートハンド、シングルハンドに対応して、高い安定性が必要になるかと思います。そこでヨットが頼れる存在である事を実感しますと、安心してセーリングをする事ができるようになります。強風時は出ないとは言っても、出た後で吹き出す事だってあります。やはり、強風においても乗る事はあるわけで、その時安心できるか、否かは非常に大きな要素かと思います。

そういう意味では、昨今の沿岸クルージング艇は、幅が広いので初期ヒールには強い。しかし、風が吹いてきて、もっとヒールしますと、今度はキールの重さが重要になってきますので、そういう時は多少しんどいのではないか?もちろん、比較の問題です。ですから、デイセーラーの高い安定性のヨットに乗りますと、実にその違いに驚かされます。

まあ、使用目的が違うと言えば、それまでですが、クルージング艇は旅を中心にしますから、そちらを優先したと言えるでしょう。それはそれでも間違っているわけでは無く、そういう乗り方のヨットという事になる。

セーリングを楽しむならセーリングヨット、クルージングを楽しむならキャビンヨット、そういう住み分けになりますから、重要な事はユーザー側がそれを理解している事になると思います。キャビンヨットでもセーリングはできる。ただ、内容が異なる。デイセーラーでも旅はできる。でも、内容が違ってくる。それだけの事であります。

デイセーラーはセーリングヨットです。シングルをも想定しています。ですから高い安定性を持っています。これは当たり前の事という事になります。そうでなければ、いろんな条件下で安心して乗れない事になりますから、それではセーリングヨットとしての意味が薄れてきます。もちろん、完璧はありませんが、より良いはあるわけで、そのより良いが大きな意味を持つかと思います。

安定性が高いとリーフをしなくても、フルセールで走れる場面が多くなります。そこに安心感もあるわけで、そうしますと、一層の快走を楽しめる事になります。セーリングの醍醐味を安心感の元で楽しめるというのは、実に面白い。強風が恐怖になりますと、こうはいきません。この差はセーリングを楽しむという次元では、非常に大きな要素ではないでしょうか?

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