第百話 中古艇 

ヨットは50年ぐらい持つんじゃないか、と書きましたが、実際、たくさんの中古を取り扱ってきましたが、20年以上経ってきますと艇によってコンディションが大きく違ってきます。まあ、いっちゃなんですが、平均的にメインテナンスが悪いヨット、乗りっぱなしのヨットが多い事に気付きます。

何かトラブルがあって、その場限りの修理が施してある。電気配線をやり変えて、途中から違う色の線に変わっていたり、まあ、ひどいのも少なく無い。これだと、寿命が20年とか言いたくなります。せっかくのヨットが、これでは台無しです。一体、何故、こんな事になるんでしょうか?ついぼやきたくなります。

ヨットは常に過酷な環境の中に居ますから、メインテナンスが不可欠です。そんな事は百も承知なのでしょうが、現実はほったらかし。これでは、乗る気も起こらなくなる。ヨットに来て、ヨットがきれいで、船内もきれいで、調子も良いなら、気持ち良くも乗れるのでしょうが、いつしか、私物がたくさん残され、荷物が多いと、シートの下など見る事も無くなる。

10年に1度は全体を見渡して、整備するぐらいは必要かもしれません。マリンライフを面白くするために。車は10年経てば、二束三文です。でも、ヨットは違う。車も10年経てば、いろいろトラブルも出てくる。まして過酷な環境に居るヨットですから、もう10年使おうとするなら、それなりの整備が必要とされます。

ヨットは20年ぐらい経っても、船体は問題無くても、その他いろんなところにトラブルが発生します。シート類、ゴム類、トイレ、バルブ、計器、それらが劣化してきます。ヨットの寿命は長いが、装備の寿命はそこまでは無い。それらが、寿命という名を持ち上げてきます。本体はしっかりしているのに。

日本でも、そろそろ、ヨットだけは、長く使えるものとして、そういう扱い方をしていく必要があります。でなければ、二束三文になったり、廃棄処分になったりしても仕方無い。メインテナンスさえしておけば、40年、50年と使えるだろうに。

もう何年前でしょうか、アメリカから20年以上は経ったヨットが日本に輸入されてきました。そのきれいな事、驚きです。チークデッキもピカピカでした。とても20年以上経ったヨットには見えません。それが数年のうちに、汚くなっていく様は、あまり良いものではありません。購入時も大事ですが、それ以上に、その後が大事なんだな〜と感じます。ヨットは50年スパンととりあえず見ましょう。それに見合うメインテナンスを施しましょう。日本もそうなると、ヨット成熟社会の仲間入り。

10年おきに、要らない私物は撤去して、外も内もクリーニングして、シート類も交換して、各艤装の点検を施す。10年に一度、スッキリして再スタートをします。次の10年への準備です。クリーニングして、片付けるだけでも、かなり見映えも違ってきます。50年間、自分が使うわけでは無いかもしれません。しかし、みんながそうすれば、買い替え時も安心ですし、気持ちが良い。そろそろ、日本も年式では無く、メインテナンス具合を中古艇の評価に大きく反映しなければならない時期かもしれません。

ヨットの寿命は、ほったらかしなら20年あたり、メインテナンスがきちんとされれば、50年以上。そんな感じですかね。エンジンだって、先日聞いた話では、漁船なんか1万時間くらい使って、オーバーホールして又使うとか。景気の良い時なんかは、エンジン乗せ換えなんかしたそうですが、昨今の事情では、そういう事は滅多に無いとエンジン屋さんも言ってました。オーバーヒートさせたりしますといけませんが、通常の使い方で行くなら、エンジンも長持ちです。いけないのは、乗らない事による影響ですね。エンジン内部に錆びが忍び寄る。

ヨットで1万時間乗っているエンジンは見た事がありません。ですから、使用時間の問題よりも、使わない事の方が問題なようです。使って、使って、使いまくって、その分の整備をきちんとする。これが最も良い方法ではあるようです。ただ、ヨットは、そうは言っても、毎日というわけには行きませんので、できる限り、動く物は動かしてやるという事が必要ですね。

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