第八十七話 優雅なセーリング

一般的にヨットという言葉から連想するのが、この優雅なセーリングでは無いでしょうか?でも、実際、こういう優雅なセーリングをしているケースは少ない。いかに速く走るかというセーリングは、刻々と変化する風の動きに合わせて、する事は少なくない。一方、クルージングという旅は、時間というものに追いかけられている。セーリングにおけるスピードやクルージングにおける時間というものが、セーリングという優雅さを奪い去ります。

誰もが連想するような、優雅なセーリング、実はみんなのあこがれかもしれません。スピードに捉われない。時間に捉われない。そんなセーリングをたまには企画しても良いかもしれません。理想的には、何人かを誘って、ちょっとした短い旅を企画します。セーリングのみで数時間で行ける範囲。スピードも時間も気にしないで良いように。天候も少し涼しいくらいの秋が最高でしょう。そして、風もそこそこ程度。強すぎず、弱すぎず。まあ、そんな絶好の機会がいつあるのか解りませんが。ゆったりとセールを張って、風の感触を楽しむ。

できれば、行先はマリーナとか漁港とかでは無くて、静かな入り江にアンカーを打つなんて事ができれば最高ですね。停泊して、明るいうちは泳いだり、おしゃべりを楽しんだり。夕陽を眺めながらの一杯。格別では無いでしょうか?ブームにランプをぶら下げて、コクピットで楽しむ食事。こんな事はめったにはありません。めったにできもしない。だからこそ楽しいはずです。1泊で十分。帰りもセーリングオンリーで、優雅に帰ります。こういう事が年に1回できたら、とっても良いイベントになるかと思います。

日常はセーリングをスポーツし、セールトリミングに頭を使い、緊張もし、それこそ面白さを追求しています。それで、年に1回、こういうチャンスを作れれば、実に緩急が効いて楽しいのではないかと思います。優雅、余裕、おおらか、そんな言葉がぴったりであります。

まあ、もしそんな入り江が近くにないのなら、仕方ありませんので、漁港でもマリーナでも良いですが、気持ちはゆったりと。1泊をのんびりと過ごす時を持つ。セーリングの感触を味わう。どこかに上陸もしない。でも、そんな静かな入り江がどこかに無いか、探してみてはいかがでしょうか?

こんな時、御馳走をと思って、いろいろ準備したりするのも避けて、ゆっくり過ごせるように、簡単なものでも、案外楽しいのではないでしょうか?

実は、こんな優雅なセーリングをした事がありません。いつも早くとせきたてられ、でもそれを楽しんでみきました。しかし、優雅なセーリングも味わってみたいもんです。優雅なのは、ヨットでは無く、本当は自分の感じ方の問題かもしれません。そんな余裕のある気持ちで、セーリングできたら、それも楽しいでしょうね。今年の秋あたりに企画してみてはいかがでしょうか?年に1回の恒例行事なんかになってしまうかもしれません。

ヨットにいつも乗っている人にとっては、いつもとは違うセーリングになります。ヨットには乗らない家族や友人達にとっては、非日常の最たるものではないでしょうか?

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