第八十二話 ファミリーセーリング

日本にはファミリーセーリングは無いと書いてきました。これは事実だと思います。しかし、最もセーリングを広めていく方法はファミリーセーリングにあるのかもしれません。父親がヨット好きで、子供の頃に、セーリングの体験を持つ。そういう事は、大人になって、たとえ、長い間、ヨットから離れてきたにしても、再び入りやすい。

欧米を見ますと、習慣というのもあるのでしょうが、家族での行動が多い。ヨットも家族で乗る人は多い。お父さんがまだ若い時、小さなヨットで、家族を乗せて楽しみます。キャンピングの一部の楽しさでもあるでしょう。それが少しづつ大きくなって、小さなヨットが少しづつ大きくなっていきます。そして、子供達が旅立つ頃、夫婦ふたりだけになって、また、ヨットサイズを小さくする事もある。

息子はこのヨットを譲り受ける事もあるでしょう。そうやって、ヨット文化は家族の世代間で流れていく。これはヨットが定着するには、最も良い方法かもしれません。家族で乗るかと言って、大きなヨットである必要は無いし、20フィート前後ぐらいとか、もっと小さいのでも良いし、キャビン無しでも、気軽に遊ぶには良いかもしれません。こういう小さなヨットであれば、やれる人はもっと多くなります。動かすにも簡単になる。海外では、小さな子供を乗せている写真なんか良く見ます。子供の頃に、そういう体験を持つか持たないかは、大きな違いになると思います。

日本にヨットがなかなか広がらない理由は、ここにあるかもしれません。ファミリーセーリングが無いから。

大事な事はお父さんができるだけ若いうちに始める事ではないかと思います。すると、当然ながらお母さんも若いわけで、多分、お母さんも若いうちにはヨットに乗りに来るでしょう。若い時は、当然ながら資金的余裕も少ない。ですから、小さなヨットで良いわけです。夫婦で、近場をセーリングして遊んだら良い。こういう事が無いから、年とってから奥さんに乗れと言っても、たいていは来ない。若い夫婦、若い家族が、セーリングに親しむ。やがて、子供ができて、ある程度経てば、今度はその子供が乗ります。その子供がやがては大きくなっていきますと、ヨットに対する意識は全く違うわけです。

こういう事が土台にあって、続いていきますと、ヨットに対する見方が変わる。これが、ヨットを広げるには必要な事かもしれません。ヨット文化の土台はファミリーセーリングにあるのかもしれません。それが無いから、日本では広がらないのかもしれません。

もちろん、欧米とは事情が異なりますが、何とか、若い夫婦にヨットを始めてもらいたいものです。父親だけになります、どうしても、そこで分断されてしまいます。学生時代にヨット部に入る人はわずかです。そして、大人になっても、ヨットに乗ろうとする人はわずか。ヨット文化の継承は、ファミリーにあるのではないか、最近はそんな感じがしています。子供が親父のヨットを借りて、友人達と遊びに行く。そんな光景が必要でしょう。何とか、ファミリーセーリングを盛り上げる方法は無いものでしょうか?

ファミリーだからと言って、セーリングはどうでも良いわけではありません。ファミリーだからクルージングと決め付ける必要も無い。家族でレースに出たって良いわけです。セーリングのノウハウを父親から息子や娘に伝えていく。彼らは、また彼らの子供に伝える。そういう流れがほしいですね。すると、若い人達がマリーナに増えてこないでしょうか?たまにでも良い、是非、家族を誘って、セーリングをしてください。

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