第五十八話 ジャパニーズスタイル

日本にもたくさんのヨットがあります。しかし、その使い方においては試行錯誤の時期のようです。
欧米人は、自分達でヨットを造り、徐々に彼らのライフスタイルとともに発展を遂げてきました。だから、ヨットは彼らのスタイルに合っています。一方、日本では、一緒に発展してきたわけではありません。ですから、自分達のスタイルが解っていない状態ではないかと思います。でも、ヨットは欧米からやってくる。それに合わせようとした。それが正しい遊び方だと思った。しかし、日本人のスタイルは欧米人とはどうも違うようです。

どんなヨットだったら最も楽しめるのか?と問う前に、どんな遊びが合うのかを考えなければなりません。あるペンションのオーナーの話ですが、お客さんの殆どは、都会から来て、この大自然の中に入って、そこでのんびり過ごすのか?と思いきや、殆どそういう人は居ないそうです。テニスはできますか、乗馬、釣り、バーベキュー云々。多くの方々は着いたら、またローカルの市街に出て遊び、夕方帰ってくるというスタイルで、何も無いところでは遊べないそうです。なる程、だから、ボートなんかでも、釣り目的なら流行る。結局、何かをしたいと考える。

ヨットを考えますと、それがレースであり、どこかに行く事であるかと思います。そして、その両方ともが、いつでも気軽にできるものでは無いというところに問題がある。最も簡単で手軽な遊びとしてのセーリングが、どうもそれだけでは物足りなさを感じてしまうのかもしれません。かと言って、欧米人の様に、ヨットに住まうとか、そういう事はできない。日本人は目的意識が強いのかもしれませんね。欧米人は住まう事を中心に発展してきた。でも、同じ事ができないのが日本人。日本人は、高い目的意識を持ちますから、その目的さえ明確になるなら、それを突き詰めていくのは大の得意であります。そこで、レースも旅も気軽では無い事を考えますと、やっぱりセーリングしかない。そのセーリングに目的意思を持つ事ができるかどうか、一般的なみんなの目的として、そこに鍵があるような気がします。

セーリングしながら、何か他の楽しそうな何かを求め、これまでも家族や友人を招待してきました。それでも、十分では無かった事に気づきます。セーリングしながら、他に何ができるのか?それが見当たらない。そこが問題だったと思います。

そこで、お勧めしているのが、セーリングを手段では無く、目的にしようという事です。セーリングしながら、他の何かを探すのをやめて、セーリングそのものを楽しもうという事です。それができるのか?最大のテーマかと思います。もし、多くの方々が、セーリングそのものが面白いと感じられたなら、実に簡単にできるし、手軽だし、時間もそうは要らない。最も流行る事になると思います。それがデイセーリングをお勧めする理由です。セーリングが主になれば、気軽にできるだけに、多くの方々がマリーナに来るでしょう。そうなれば、その中から旅に出る人もあれば、レースにのめりこむ人も居ます。全ての基本はセーリングにある。

問題は、セーリングそものをどうやって楽しむ事ができるのか?ここ一点につきる。ここを突破したなら、多分、キャビンも使えるようになると思いますね。せっかくのキャビン、楽しまなくてはもったいない。どうやってキャビンを、と思うのでは無く、セーリングさえ楽しくなれば、キャビンも生き返ると思う次第です。セーリングさえ楽しめるなら、レースも旅もキャビンも、もっと楽しめるようになる。ですから、セーリング自体を目的として、どうやって楽しむか?これを考えていこうと思います。欧米ではヨットのキャビンを主役にする事ができますが、日本では何か他の主役があってこそ、脇役になった時、キャビンも光ってくるのではないかと思います。

ところで、話はちょっと違うのですが、ある方から聞いた話です。世界をヨットで旅をすると、欧米人にたくさん出会うそうです。そして多くが、夫婦で旅をしている。日本人は少ないがたまに出会う日本人はたいていシングルハンドだそうです。この違いは何か?
日本の奥さんはヨットに来ない。紫外線に弱い。それに比べて、欧米の奥さんはたくましてく、紫外線を気にしていない。だから、彼らは夫婦で行動できる。どっちが良いとかの問題では無く、多分社会進出の度合いの違いかもしれません。国民性の違いかもしれません。つまりは、日本の場合、奥さんはヨットに来ないのが普通なのであります。来ても、それは例外なのであります。長い期間、ヨットをするというのは、理想的には夫婦でやるのが最も良い。短い期間なら、誰でも良いのですが、何年もやるという次元では、共同生活している、奥さんが最も良いわけです。欧米人はそうします。でも、日本人の奥さんは来ない。この違いはヨットライフに大きく影響を与えます。それなら、日本人はシングルハンドを、最終的にはできるようになりましょう。と思う次第です。その方が自由自在になれます。友人は彼らの生活スタイルがあります。いつまでもあてにはできません。ですから、いつかはシングルハンドに。

という事は、総合して考えますと、セーリングをシングルで自由自在。これが全ての基本になる。今はそこに向かう試行錯誤の時期。日本人のスタイルはこれかな?

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