第五十話 慣れ

カジュアルセーリングは乗り方というわけではありません。気持ちの問題ですから、気持ちが気楽かどうかが重要になります。どんなヨットであれ、自分が気軽にセーリングに出られる事こそが、もっとも重要であり、楽しむ事のベースになるものです。

それで、シングルハンドという乗り方がありますが、カジュアルセーリングに最も早く到達する為に、シングルハンドセーリングという、いわば最も難しいセーリングに挑戦してみてはどうかと思います。最も難しいが故に、これに慣れてさえおけば、後はどんなでもOKなのです。気楽で居られます。最初はいろいろ戸惑う事もあるでしょう。でも、最初は誰かのサポートを受けるにしても、最終的にはシングルハンドでお気楽にを念頭においておきます。

ひとりでマリーナから出航する。エンジンを使います。風も吹く、しかも都合の悪い方向から強く吹く。最も難しい場面を、何とかクリアーする事。このハードルさえ越えられれば、カジュアルセーリングはすぐそこにある。後進で出る練習をしてください。慣れてください。それで、殆どは解決する。

マリーナに帰ってきた時も同様です。停止して桟橋側に風で流されるのなら良いのですが、都合の悪い事に、桟橋から離れる方向に流される。隣は、また別のヨット。ぶつけちゃいけない。そんな気持ちで緊張します。だからこそ、ここを征服しなければなりません。桟橋に着いたら、即座に、あらかじめ用意しロープを持って、桟橋に降りる。後は、手で引いて寄せる。例えばですが、なんらかの工夫で、流されないようにする必要があります。或いは、反対側にフェンダー入れて、隣のヨットに当たっても支障が無いようにしておくのもひとつの手ですね。

とにかく、シングルで、マリーナからの出し入れを気楽にできるようにするのが大切になります。そしてこれが最も大きなハードルでもありますから、ここを一番に、最も難しいシングルで、慣れておく事が、後々のセーリングに大きく響いてくるかと思います。これができれば、セーリングを手に入れたようなものです。

出そうかなと思う時、躊躇が無くなります。それが何より大切です。しかもひとりでするのに慣れていれば、いつでも出せる。最も高いハードルを最初にクリアーしてしまえば、後は徐々にセーリングを楽しみながら、腕前を上げて、楽しみ、挑戦し、味わえば良い事になります。

そういう事を考えた時に、出てきたのが、デイセーラーというわけです。これなら誰でも比較的簡単にそれができる。そして出れば、腰の強さがあって安心ですし、高い帆走性能は面白い。何といっても、カジュアルセーリングには最適ではないかと思う次第です。ですから、当社ではメインなのです。強い風の時でも、安心して楽しめるのは、セーリングの幅を広げます。

慣れてしまえば、出し入れの事は考えなくなります。よりセーリングの方に意識が向きます。その次は楽にメインセールを上げれるか?ある程度の力は必要だとしても、苦になるようではいけません。体力は年々落ちています。ある方法としては、スライダーの摩擦軽減をする事によって、かなり楽に上げ下ろしができる。ストロングトラックというのがありますが、あれはなかなか良いように思います。 

さて、次はメインのリーフ。これもシングルラインリーフというのがあって、コクピットから1本のロープで、前後を固定する方式があります。これも良い。かなり楽であります。マストのところに行かないで済む。

お次はシート。メインのシートがどこにあるか?コクピットの前にあるのか?それなら、ちょっとやりずらい。オートパイロットを使うしかないかもしれません。ジェノアはどうでしょうか?強風で大きくヒールした風下側のウィンチを、舵を持ったままできるか?これも何らかの解決を必要とする。
ラットかティラーかにもよります。シングルでやるのと、もうひとり居るのとでは、全く状況が違います。30フィートぐらいシングルで、とは言いますが、実際、こういう事を考えますと、元来シングル用に作っていないという事が思い知らされます。

では、シングルで乗らなければ解決です。もうひとり居るなら、シートがどこにあろうが、リーフがどうなっていようが、どうにでもなります。時折、舵を交代してあそんでも良い。サイズも大きなサイズでも乗れる。大抵の事はふたり居ればなんとかなります。オーパイ使わないでも。シングルの2倍どころか、3倍ぐら違う。でも、最大の欠点は、相棒が来ないと乗れないのです。誰か居ても、ヨット知らない人ではシングルと同じです。いつも相棒と一緒でなければならない。これはカジュアルセーリングから遠のいてしまう。

デイセーラーの良いところは、シングルで扱えるようになっている。これもデイセーラーを推進している理由のひとつです。結局、カジュアルセーリングを目指した時、デイセーラーが最も同じ所にコンセプトを持っている。それが、私がデイセーラーを好きな理由ですし、推進する理由です。そういう部分を広く知って頂きたい。押し付けはしませんが、提案です。理解して頂きたい。そのうえで、判断して頂きたい。それについては、カジュアルセーリングの魅力をもっとお伝えしなければなりません。シングルが容易で、腰が強くて、剛性も高く、カジュアルセーリングにおはもってこい。ただひとつ、キャビンが狭いという事を受け入れなければなりませんが。でも、セーリングが面白くなったら、そんな事はたいして重要では無くなると思うのですが。もちろん、たまに、人のヨットに呼ばれて、キャビンに居れば、こういう宴会には良いなとは思います。しかし、それで失うものと天秤にかけると結論は言わずと知れた事。

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