第二十一話 時代の流れ

同じデイセーラーでも、少しずつ違います。アレリオンはデイセーラーの中でもシングルハンドを最も容易にした艇です。それは、ダウンウィンドにおいては、ジブブームでジブをそのまま展開できますから、ジェネカー等のオプション設定がありません。つまりは、メインとジブのみであらゆる角度を走る事ができます。それにサイズが大きくなりますと、電動ウィンチを持っていますから、セールホイストからトリミングまで、全て電動ウィンチで操作可能としています。ですから、ひとりでも簡単に操作ができる。あらゆる風の角度で。

同じデイセーラーのセーバースピリットはメインのハリヤードウィンチを電動にしてますので、セールホイストはアレリオンと同じ。しかし、メインシートのウィンチは標準ではマニュアルです。それに、ジブのセルフタッキングも、ジブブームという設置はありません。つまり、ダウンウィンド時にはジェネカーを展開するのが前提にあります。

このふたつの違いはどっちが良いという事はありません。オーナーの考え方次第かと思います。ジェネカーを展開しないでも走れるダウンウィンドは簡単です。しかし、ジェネカーを展開するセーリングはエキサイティングです。シングルなら、アレリオンの方が楽ですが、ちょっとスポーツ的にもやりたいとか考えますと、ジェネカーを展開する方が面白いかもしれません。それにジェネカーにファーリングシステムを採用するなら、シングルももっと楽になれます。

このふたつは好みの問題、コンセプトは同じでも、もっと突っ込んでいけば、枝分かれしています。それゃあそうでしょう。みんな同じなら面白く無いですから。同じコンセプトであっても、この少し違うところが面白さです。さあ、どっちを選ぶか?ジブとメインだけでダウンウィンドも走れるアレリオンか、或いは、ダウンウィンドはジェネカーを使って、もっとエキサイティングに走るか?
 
 アレリオン38
 シングルで、ダウンウィンドもそのまま走れます
 









 セーバースピリット368
 セルフタッキングのジブを巻いて、ジェネカー
 を展開中。










乗り方次第なのですが、同じセーリングを楽しむにしても、ちょっと趣向が異なります。そして、ああいう場合、こういう場合といろな場面を設定しながら、いろいろ考えるものです。しかし、本当に望む物は何か?どういう走り方なのか?最重要ポイントは何かで決定すべきかと思います。そこをはずしては、面白さが減衰します。まあ、これも悩ましいが楽しいものです。

そこで、その両方を兼ね備えたヨット、これがハーバーヨットという事になるでしょう。当然ながら、これら二艇より後にデザインされています。ハーバーヨットはジブブーム持っています。ですから、このままダウンウィンドを走る事ができます。さらに、オプションですが、バウポールを設置して、ジェネカー展開も可能です。どっちもできる。ここに流れを感じますね。

 写真はハーバー25です。ジブブームが設置
 されておりますし、そのままダウンウィンドも
 走れますが、このヨットはバウポールを出して
 ジェネカーを展開。

 アレリオンとセーバースピリットの両方を備えた
 という感じです。但し、まだ大きいサイズはあり
 ませんが。30フィートデビューは今年です。

 時代の流れを感じます。最初のデイセーラー
 アレリオン28のデビューの時は、まだジブブー
 ムがありませんでした。それで、ダウンウィンド
 用にはスピン設定がありました。その後、ジブ
 ブームが開発されて、アレリオンは一機に、シ
 ングルハンド志向に向かいます。

 一方で、後発のセーバーは、ダウンウィンド時
 をもっとエキサイティングにと、ジェネカー設定
 を考え、さらに、後発のハーバーヨットは、その
 両方を採用した。そういう流れです。

 どれが良いかという問題ではありませんね。
 考え方の問題。面白いもんです。ちなみに、ア
 レリオンのジブブームに付く、ラトエアーイクス
 テンダーはアレリオン独自の物です。

こうやって流れを見て行きますと、実に面白い。この後、一体どういうのが出てくるのか?やはりジェネカーの展開関連でしょうか?ファーリングジェネカーは既にあります。しかし、UVカバーが無いので、ジェネカーを巻いて設置したままという事ができない。他にも理由があるかもしれませんが。

ジェネカーをもっと簡単に、シングルでも展開できる艤装。これが待ち望まれる。これで、ダウンウィンドも自由自在になります。そういう意味では、ジブブームの開発というのは、活気的だと思うのです。シングルなら、圧倒的に楽でしょう。

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