第九十二話 セーリングを身近に

間 寛平さんが太平洋横断されましたが、これはこれですごい事ですし、私にはできません。しかし、こんな世界を回るのもヨットですが、でも、もっと身近なセーリングを、もっと気軽に楽しむという風潮が望まれます。太平洋横断なんかしなくても、その目の前の海域で、気軽にに遊ぶ事ができるなら、それも素晴らしい事だと思います。

世界を回っている人達は、世界にはたくさんおられます。その中でやはり日本人は少ないと聞きます。しかし、そんな事はどうでも良く、世界を回る人達が増えるより、日常に、気軽にセーリグを遊ぶ気運が高まる事を願っています。それには、ヨットを身近に感じる事と、セーリングが他の気軽なスポーツと同じように、決して特別な行為では無いという事。大きなヨットだけがヨットでは無く、小さなヨットがたくさん増えていく事を願っています。

ヨットが大きくなればなる程、一般からは離れていきます。もちろん、そういうヨットもあって良いわけですが、その反面、小さなヨットが減少していく事が問題で、キャンピングカーはそれなりの楽しみ方もあり、自転車だって面白い。それぞれに、それぞれの面白さがある。

今年の4月から取り扱いを開始したハーバーヨットの造船所は小さなモデルをたくさん造っています。日本でハーバー20をどうしたもんかと考えた時、いろいろ考えるところがあります。日本では、トイレがほしいとか、キャビンがそこそこはほしいとか良く言われますが、ハーバー20にはキャビンも無い。エンジンはと言いますと、船外機は人気が無い。ハーバー20のユニークなところは、電動モーターが設置できるというところですが、アメリカではエンジン自体を設置しない人達も少ない無いそうです。このぐらいのサイズには必要無いと考えているのか?この気軽さが日本には無い。
考えて見れば、ディンギーにはエンジンが無い。20フィートのヨットをエンジン無しで乗れるか?
面白い事にオールのオプション設定があります。

アメリカと日本では事情は違う、マリーナも違う。しかし、もっと何とか身近に感じられるようにならないか?湾内で遊ぶから、大きいのは必要無い、それより小さいヨットを、自由自在に走った方が面白い。そういう考え方も成り立ちます。日本では、どちらかと言いますと、遠くに行かないから小さいので良いというより、予算の問題になりがち。という事は予算があれば大きいのがほしい?

前に、ロイディズニー氏(77歳)がハーバー20を購入した事を書きましたが、彼はディズニーの総帥ですから、でかいヨットを買う事もできるでしょう。でも、何故、ハーバー20という小さな、キャビン無しのヨットを買ったのか?しかも、ご夫婦でセーリングを楽しんでおられるらしい。選択は予算もありますが、気軽さから、使い方から、いろんな面で考える事ができます。大きい方が良いとは言えない。

日本に、たくさんの小さなヨットが増えて、価格も安くなりますから、もっとたくさんの人達がヨットを遊ぶ事ができるようになり、そうなればみんなが特別には思わなくなり、身近に感じられるようになる。エンジン無しでも乗れるようなヨットが、もっともっとたくさん増える事は、同時に大型も増えるでしょう。ピラミッド型のようなマーケットになるのが理想です。自転車感覚のヨットがもっともっと増えれば、ヨット界の裾野は広がり、面白くなると思いますが。

日本に住んでいたオランダ人、J24をエンジンを使わずに出入りしていました。カッコイイもんです。日本でも出来ないわけではありません。ただ、マリーナの係留料は問題ですね。小さいヨットには、ぐんと安価で留められるようになればと思います。そうしたら、サラリーマンが小さなヨットを買って遊ぶ事ができるようになる。たくさんのそういう人達が集まれば、マリーナは賑やかです。そうすれば、また別なビジネスも発生するでしょう。レストランやカフェ、人が集まれば、何かが生まれます。集まった人達にとっても良い。

現実はなかなかこうはいきませんが、でも、そういう気持ちも持ち続ける事は必要でしょう。アメリカには高級なマリーナもあれば、安価なマリーナもたくさんあります。全体がそういう気運を持つのも必要かと思います。そうすれば、徐々に何かが変わるのでは?環境が変わるのを待つより先に、気分をそういう風に持って行く事が先でしょう。気持ちが先に来て、それにあわせて回りが変わる。
だからこそ、そういう気持ちをまずは持つ事が大事かな?

それと、何でもかんでも設置しないとセーリングはできないのか?これにも考え方を改める必要もあります。最低限必要な物は必要ですが、それ以上、あまりにもあれもこれもと考えますと、その分離れてしまうような気もします。気持ちは解りますが。でも、そういう事に、シンプルさに慣れる事なのでしょうね。これでも、充分遊べると思えれば、ヨットはとっても身近になります。

次へ       目次へ