第八十一話 見えてきた

いろんなヨットが研究され、開発されてきました。世界を回る外洋艇、レーサー、クルージング艇、スポーツ艇、そしてデイセーラー、だいたい役どころは揃ったような気がします。もちろん、それぞれの分野でもっと開発は進むと思いますが、まあ、これだけあれば、いろんな使い方に対応できると思います。そして、これらヨットに対する素材も開発され、工法もいろいろあり、便利グッズもたくさん出てきました。もちろん、物によっては高価過ぎて、一般ヨットには採用できない物もありますが、物としては出来上がりました。

さて、問題はこれからです。この揃ったヨットをどう扱っていくか、いけるか?これは使う側の人間次第という事になります。バットとボールが揃って、野球場もあるという時、後は何をするかといえば、ゲームです。どんなルールで、どんなゲームをするか?最初は各ポジションの役割を決めて、ピッチャーは投げ、バッターは打つ。当たり前のゲームです。後は、どれだけ質を上げていくかになるかと思います。何故なら、その方が面白いからです。このままでは飽きてしまいます。

ピッチャーはより速いボールを投げ、制球力を高め、変化球も覚えます。それに対して、バッターも研究して、それを打ち返す事を考えます。守りは連携プレーなどの研究もします。こうやって、ゲームの質を上げていく。何もプロだからこういう事をするわけでは無く、アマチュアでも、その方が面白いからやります。質が上がるから面白いとも言えます。もちろん、技よりも面白さが優先ですが。

野球にしろ、サッカーにしろ、最初からこうだったかと言いますと、多分違うと思います。最初はみんな、単純に打って走ったのだろうと思いますが、それが深まるにつれ、いろいろ工夫があり、質が上がっていったのではないかと思います。

ヨットは、今、次の段階に入る時ではないかと思います。前に書きました所有から使用です。みんな、どうやって動かしたら良いかは解っている。次の段階はいかに面白くするかという事になると思います。レースというゲームをするか、旅か、キャビンか、或いは他のセーリングか?その中で自分のリズムと合うゲームを選び、それをもっと深めていく。何をするかという各行動もありますが、そのひとつひとつの質とその感じを高めていく。簡単に言えば、もっと面白がる。

マリーナから出して、セーリングして帰ってくるまでをいかに質を上げ、その感じを深めていくか?そこに面白さの謎があるような気がします。いろんなやり方はあると思いますが、その中のひとつとして、セーリング操作のひとつひとつの向上を意図してみたらどうかと思います。メインセールひとつ上げるだけでも、より簡単にスムースに、素早く上げる。舵を操作するにしても、微妙さを感じる。より良いセールシェープを作るにはどうしたら良いかを考え、いろいろ試行錯誤をしてみる。操船はできますが、より精度を高めていくというゲームです。

或いは、旅が好きなら、GPSという便利な手はありますが、それだけでは不十分ですから、海図に描かれている事、夜間航行、あっちこっちの港の知識、海流、いろいろこれもあります。レースなら、操船はもちろん、相手とのやりとりとか、いかなるコース取りが良いのかなどなど、これもいろいろある。

とにかく何でも良いので、やっている事の質を上げていく。ピッチャーが制球力を高めようとするのと同じように。そうやって深めていく事が無いと、面白さが減衰し、飽きてくるようになるのでは?
キャビンに寝泊りするのにも、いろんなノウハウがあるでしょう。季節も関係あります。そういうのを求める事が面白さになっていくのではないかと思います。

考えてみればいろいろありますね。GPSの使い方、舵、シート、バング、バックステー、ハリヤード、エンジン、バッテリー、ビルジポンプ、電気、波、気象、潮、海、風、季節、場所、いろいろ知れば知る程、全部が互いに関係しあい、もっと深くなる。もっと他にもあるでしょう。自分なりの面白さを見つけ出す事で、今後のヨットライフの質は随分違ったものになっていくのではないかと思います。

これからは、どんどん、時間の許す限りヨットを使って頂きたい。乗り回して、扱いまわして、おもちゃにして遊んで頂きたいと思います。

次へ       目次へ