第六話 敏感なヨット

久しぶりに福岡のアレリオンに乗せて頂きました。進水して半年ぐらいでしょうか。オーナー曰く、ティラーを持つ手に、時折、微妙な振動を感じるとか。そう言われて、私も注意してましたら、確かに、そういう感じがします。そこで、マリーナに戻って確認すると、舵が確かに汚れている。

最近では海水温度が高くなったせいか、船底の汚れが早くなったような気がします。これも環境の問題でしょうか。そして、アレリオンのようなレスポンスの良いヨットは、少しの汚れなんかで、それが敏感に舵に伝わる事がわかります。多分、鈍いヨットであれば、こういう事は解らないかもしれません。

これが良いか悪いかは別として、敏感なヨットは、繊細に反応します。ですから敏感であり、レスポンスが良い。いろんな変化にきれいに反応するという事は、汚れも反応するという事でありますから、こういうヨットはセーリングして面白いのですが、同時に船底の汚れも反応するので、メインテナンスをちゃんとやらないといけない事が解ります。

オーナーは何度も乗られていますから、その微妙な変化にすぐに気付かれる。そのまま放っておきますと、もっとひどい事になります。良い状態を知っているだけにすぐに違いが解るようになりますし、こういうヨットはまたすぐに反応します。ですから、非常に状態が解り易い。

鈍いヨットは、ゆったりと考える事ができます。舵を切ってもゆったり反応します。こういうヨットは何も鋭敏さを求めるわけでは無いわけで、ロングクルージング向けとかには返って良い。でも、これでセーリングの妙を楽しもうというには限度があります。鋭敏なヨットもそうで無いヨットも、それぞれに向き不向きがありますから、これで良いのだ。目的に合うように造られています。

敏感なヨットに乗ると、操作が大変なのか?否、そうでは無く、敏感なヨットに乗ると面白いのだと思います。ひとつの操作によって反応が解るヨットと、解らないヨットでは、面白さが全く異なる。まあ、セーリングを楽しむという意味では、非常に面白いし、セーリングは操作とその反応を楽しむものかと思いますので、セーリング自体を楽しもうとされる方にとっては、この鋭敏さはあった方が良いと思いますね。

但し、上記しましたように、当たり前の事ではありますが、鋭敏さは何も操作の反応だけでは無く、いろんな事にも反応しますから、メインテンスを良くする事が面白さをキープすることになります。

敏感なヨットは、何もちょいと引いて、それだけで大きくヒールするとか、そういう意味ではありません。大変さは全く無い。それがもし大変なのなら、それは鋭敏さにあるのでは無く、性能の問題かと思います。良いヨットは鋭敏であり、尚且つ、操作は楽で、ただ微妙な反応さえすぐに分かるというものです。それがどんなに楽しい事か、セーリングには実に面白い、愉快であります。

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