第四十九話 世界のヨット

世界にはまだまだたくさんのヨットがあります。しかしながら、価格的に抑えられた量産艇と言われるヨットは、もう殆どは日本に紹介されていると思います。日本に紹介されていないのは、それ以外
カスタム、セミカスタム、少量生産等でしょう。それらはだいたいレベルは高い。品質が良いだけに価格も高い。

欧米では、一般量産艇が多いのは当然ですが、これらの少量規模生産のヨットにも需要があり、これらの造船所を支えています。福岡には海外から世界を回るヨットが良く立ち寄りますが、その多くは知らないようなヨットが多い。そういう世界を回る方々は、彼らなりのこだわりがあるでしょうしょうから、そのこだわりを満足させるには、その辺のヨットというわけにはいかないようです。

年間の建造艇数が10艇以下という造船所なんかたくさんあるわけです。こういう造船所は、基本ベースはあるものの、オーナーのご希望に合わせて、いろいろ変更する事ができる。もちろん、造りも丁寧だし、品質は高い。まあ、予算に余裕があるなら、最後のヨットとしては相応しい。

ヒンクリー、アルデン、モーリス、彼らもそんな造船所です。オーナーの意向が反映できる造船所です。非常に手間のかかる事です。でも、それをやるのが彼らの存在意義でしょう。非常に高価ですが、それに見合うだけの品質レベルを持っている。ちょっと何かを変えるだけで、それに関わるいろんな所を変えなければならない事もある。

年間数十艇から100艇前後の生産数であれば、プロダクション化されていますが、オプション設定をたくさんもって、プロダクション艇ではあっても、オーナーの意向ができるだけ反映できる体勢を取っています。例えば、スループをカッタリグに変えたり、内装のウッドの種類を変えたり、レイアウトもいくつかのパターンから選択できたり、いろいろあります。場合によっては、リストに無い物でも
引き受けてくれる事もある。

それがもっとプロダクション化が進みますと、オプション設定が減り、標準装備が増える。艇によっていちいち変更が大きいと間違いの元、それに面倒です。若干のオプションに限定して、流れ作業でどんどん作る。

日本では、高価であればある程、何でも標準でついてるという事を期待されます。でも、海外は逆で、オーナーの意向が反映されるには、オプション設定が多い方が良いとされます。ある造船所では、アルミマストが標準、それをカーボンに、レーシング用に、メインファーラー用に、或いは、ジブファーラーにしてもメーカーを選択できたり、ワイヤーからロッドリギンにしたり、セルフタッキングにしたり、いろいろ受け付ける。そのオプションリストの長い事。セミカスタムでは無いにしろ、そういう選択ができるのを好むのが欧米人のようです。それこそ、オートパイロット、GPS、レーダー、の種類やメーカー選択、電気関係のシステムをどうするか、例えば、バッテリーモニターとかチャージャーとかも種類がある。そういう事を検討する事は面倒? 或いは楽しみ?そのあたりが違うのかもしれません。

それに人気のある造船所では、順番待ちです。私の知る限りでは、発注してから、納艇されるまで、5年待ったという人が居ましたね。もちろん、日本人では無いですが。それも自慢のひとつのように聞こえましたが。

しかし、一般的には、そのあたりでセーリングするのには、こんなのは不要であります。量産艇でも充分です。では、何故、こういうヨットが売れるのか?価格は多分2倍から3倍はします。自慢はもちろんできますね、でもそれだけでは無い。セーリングにおけるフィーリングが全く違う。時化た時は全然違う。フィーリングを求めて大枚をはたくなんてのは、何と贅沢な。

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