第三十八話 セルフタッキングジブとダウンウィンド

  通常のセルフタッキングジブは写真の様に
  マスト前に左右に渡るトラックが設けられ、
  そのレールについたブロックが左右に振れ
  ます。ジブセールは当然ながら、マストの前
  迄しか来ない、小さなセールとなってしまい
  ます。

  このセルフタッキングジブの利点はタッキン
  グが簡単である事、舵さえコントロールすれ
  ばジブはメインと同じように左右に自動的に
  振れる事になります。実に簡単です。

  しかしながら、マイナス面もあります。まず、
セールエリアが小さくなる事、もう一点はジブシートのリード位置が前にあり前後に調整ができない事です。セールエリアにつきましては、最初からセルフタッキング設定がオリジナルであれば、マスト位置を少し前側に設定し、メインセールを大きくしているのが通常です。これでセールエリアをカバーする事ができます。しかし、後付の場合は、こういうセールプランでは無いので、セルフタッキングジブにしますとセールエリアが小さくなるので、そのあたりの検討は必要になるでしょう。実際に、ジェノアを小さく巻き取って、どんな具合に変わるか試しても良いかと思います。

それからもう一点については、シートのリード位置、上りは良いのですが、落としていった時、セールを開きます。この時、リードをもっと後部から通常のジェノアトラックからもう1本引けばいいのですが、そういう面倒な事はしないという事であれば、リード位置が前過ぎて、適切にセールを調整できないという事になります。これはセルフタッキングジブの難点ではあります。簡単にセーリングができるようになる事と天秤にかけて考える事になると思います。

  さて、そこで、この難点を解決したのが、ジ
  ブブームです。これになりますと、もはやマ
  スト前のトラックは不要で、シート一本で、
  左右180度以上に渡って、ジブをどの角度
  でもきれいに開く事ができます。









  写真のように、ジブセールを大きく開いても
  セール形状が崩れない。よって、大きなジェ
  ノアを使って、ダウンウィンドを走るよりも
  効率的になります。

  このジブブームを使えば、ジェネカーやスピ
  ンを使わずとも、ダウンウィンドがそのまま
  走れますので、シングルでも楽々というわけ
  です。




さて、このジブブーム無しにおいても、セルフタッキングジブは気楽なセーリングを与えてくれます。
もし、ダウンウィンドにおいて、やろうと思うなら、このセルフタッキングを閉じて、ジェネカーを使う事になります。多少の手間はかかりますが、確かに使わないよりはエキサイティングなセーリングを堪能する事ができます。この煩わしいジェネカーをさらに容易にする為に、ファーリングジェネカーという方法があります。

  ジェネカーをファーリングできる装置です。出航前にセットして
  セーリングして、マリーナに帰ってきてから下ろす事ができま
  す。また、シングルハンドの方で、ジャイブが難しいなら、ジャ
  イブ前に一旦巻いて、ジャイブして、再びジェネカーを開く。
  そういう方法なら、シングルでもダウンウィンドが容易になり
  ます。

  ダウンウィンドは全てのヨットにとって、いかなる方法を取るか
  が課題になります。このダウンウィンドをいかなる方法であろ
  うと、難なくこなせるようになりますと、セーリングの幅は随分
  広がろうというものです。大きなジェノアよりも、ジブブームの
  セルフタッキングジブの方が効果的ですし、さらに、ジブブー
  ムより大きなセールエリアを持つジェネカーの方がエキサイ
  ティングでしょう。

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