第十八話 趣味的セーリングの勧め

レジャーと趣味の違いは、レジャーは誰かが遊ばせてくれる。趣味は自主的に自分を遊ばせる。趣味になったら、自分で考えて、進化向上を図る。それで、少しでも何かが解ったり、なる程こうか、とかいう事がありますと、俄然面白くなります。つまり、趣味はレジャーよりも少し自主性が生まれ、そこに進化向上が確認できるようになる事が必要かと思います。それで、段々と夢中になって、どんどん進化し、それが長く続きますと、プロレベルになっていくのかもしれません。まあ、そこまではそれぞれにお任せするとして、少なくとも、レジャー一辺倒から、少しでも趣味の方向へ踏み出して頂ければと思います。

真っ直ぐ走るのが基本だと思いますので、それをまず、ただ真っ直ぐ走れば良いというレベルから、風向の変化、風速の変化に応じてセールを調整する事と風向の変化に合わせて、舵をコントロールして同じ角度を保つという事をします。この事は以前にも書きました。風向と風速が変化しますと、これが結構難しい。難しいので、適当なところまでやります。風向の変化はセールの角度の変化、或いは、舵の調整、風速の変化はセールに取り入れる風の量の調整という事になります。

次に真の風と見かけの風について考えてみます。これは誰でもご存知かと思いますが、もうちょっと考えてみます。アビームで走って、帰りも反対舷のアビームで走ると、元の位置に戻らない。このあたりをきちんと整理しておきます。この例は見かけの風によるものですが、例えば、真の風が真横から吹いてきているとしますと、ヨットはその風を利用して前進します。すると、見かけの風は前側に回り、例えば、真の風は真横からですが、ボートスピードによりますが見かけの風は前方45度から吹いてくるとします。次に舵を切って、180度ターンしますと、今度は真の風は反対舷の真横から吹き、見かけの風はまた前側によりますので、同じ条件だとしたら、再び上りの45度になる。つまり、真横から真の風が吹く時、180度ターンしても同じという事になります。上りで行って、上りで帰る事になります。

真の風が前方45度から吹いている時は、見かけの風はもっと前側から吹いてくる。例えば、30度から吹いてくるとしますと、タックする時、60度ターンしては走れない。90度ターンしてスピードが上がってきて、やっぱり反対舷の30度から見かけの風が吹いてくるようになる。また、見かけの風は真の風速より速くなったり、遅くなったりします。真の風が真横より前側から吹くと、ボートスピードが加わって、風速が増し、逆に真横より後ろだと見かけの風速は減速する事になります。

真の風と見かけの風をきちんと理解しておきますと、舵を切って新しい方向に向かう時、それがどっちからの風になるかが解り、セールをセットする角度も解ってきます。ターンする前に解りますから、慣れてきますと、即座に次のタックでのセールを出す角度の量も解る。つまり、ここで、解るという事が面白さに繋がると思います。

左舷真横から見かけの風が吹いて走っている。この先で右舷に90度切るとしますと、真後ろからの風では無く、右舷側後方からの見かけの風になる。という事は、ジャイブしなければならないという事になります。最初は左舷からの風ですから、セールは右舷、このまま90度右舷に行きますと、真の風向を90度に達する前に真後ろから受けて、そこでジャイブして、今度はセールは左舷側に来ます。

ターンする時、新しい方向での真の風向がどこから来るか、ヨットの進行方向が真の風の方向とその直線上を超えるか、超えないかによってセールをタック又はジャイブしなければならない。その事が事前に解る事になります。見かけの風だけなら簡単なのですが、実際は真の風があるので、
ちょっと考えなくてはなりません。新しい進行方向が真の風の風位を越えるか超えないか、そのまま落として走れるか、タックするのか、ジャイブするのか、その角度は?これらが解ると、スムースに対応ができます。今左舷から風を受けて、新しい進行方向になった時、風は左舷から受けるのか、右舷から受けるのか?同じ舷側から受けるなら、そのまま落とすか上る、反対側から受けるのであれば、、タックして落とすか、ジャイブして上るのか?

360度、ぐるりと回ってみましょう。上りから始まって、タックして、そのまま落として、ジャイブ、そして再び上って元の角度まで。今度はその逆で、落として、ジャイブして上って、タックして元の位置へ。90度右へ、90度左へ、120度、150度、180度、いろいろやってみましょう。その時、新しい進行方向において、真の風の方向はどうなるか、考えてからやります。タックが入るのか、ジャイブがはいるのか、或いはただ落とすだけで良いのか?これらに慣れて、即座に解ると、動きがスムースになると思います。

次に、セールに取り入れる風の量をどうやって調整するのか?バックステーアジャスターを引いて、セールをフラットにする。緩めてドラフトを深くする。セールにツウィストをつけて、上部から風を逃がす。このあたりの理屈を理解して、実際のセーリングで試してみます。それで、自分の艇のスタビリティーとのバランスで、どの程度取り入れ、どの程度逃がすかを掴んでいきます。

風向がわかり、角度が解る、風速が解り、セール調整が解る。後は、これらの応用です。一遍にしようと思うと難しいので、ひとつづつ理解しながらやっていきます。すると、セーリングはどんどん面白くなると思います。こんな事をやっていますと、良い風にめぐり合って、とっても良い気分になる事があります。前に書いた至高の時、そして縦横無尽に走れる事になります。

ここまできたら、次は、もっとセール調整の微調整をやって、もっと繊細なセーリングができる。解らない時に、繊細な事を言われますと、何もそこまでやんなくてもと思いますが、解ってくると、そういう事も解りますね。解る事が喜びになれば、セーリングを趣味としてやれます。

最近では、団塊の世代と言われる方々が、いろんな分野で新しい事に挑戦される方々が増えていると聞きます。ヨットは難しいと思われかもしれませんが、そんな事はありません。実は、簡単なのです。ただ、趣味的に突っ込んでいくに従って、その奥の深さがありますから、難しいともいえます。何でもマスターしよと思えば難しいもんです。レジャーとしても遊べるヨットですが、もう少し突っ込んで趣味にする事で、セーリングの面白さが解ると思いますので、是非、挑戦して頂きたいと思います。そうしますと、外部のエンターテインメント性に頼る事無く、面白いセーリングが堪能できると思います。

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