第八十九話 年齢別セーリング

若い時なら、体力もあるし俊敏さもある。ですから素早く動いたりも、いろんな事も厭わない。しかし、年をとってきますと、体力も落ち、俊敏さにもかけてくる。何も自分のせいでは無く、自然の成り行きですから仕方ありません。そういう時は何も無理をする必要も無いし、かといってセーリングを諦める必要も無い。自分のセーリングをいかにするか、という事になると思います。セーリングは若い時は若い時なりの、また年齢を重ねれば、またそれなりのセーリングができる。

体力の減退はパワーアシストで補うのもひとつの方法です。電動を使えば、ボタンを押す力さえあれば良い。或いは、ヨットのサイズを落として、あまり力が要らないようにするのも方法のひとつです。

このTALKのページに何度も出てきて恐縮ですが、アレリオン28に乗りますと、その楽さが実に感じられます。メインセールのスライダーに潤滑剤を時々吹きかけます。シリコンスプレーとかです。すると、ほとんどトップまでウィンチ無しで引き上げる事ができる。ウィンチを使うにしても、最後のわずかぐらいで済むでしょう。その後、ジブを展開して、これももちろんウィンチは不要、その後のセーリングにおいて、メインシート、ジブシート、バックステー、メインのトッラク、どれにもウィンチは不要で舵を握ったまま、片手で事足りる。これって、かなり良いと思います。強風でもです。それに舵も持っていて軽い。軽いという事は、それだけ自然にわずかなフィーリングの違いも感じられるという事になります。

それで、次に33フィート以上には、ウィンチを電動にした。このヨットの考え方には多いに賛同するわけです。若い方々には、もっとスポーティなヨットで、激しく動くヨットの方が良いかもしれません。しかし、こういう楽に動かせるヨットというのは、しかも、セーリングを楽しむ上で、レスポンスの良さは、セーリングそのものを楽しくさせます。

若い人には電動ウィンチなんか要りません。しかし、ある程度体力の減退を感じ始めた頃、それでも、楽にセーリングを楽しめるようにするのが良かろうと思いますし、そうすれば一生遊ぶ事ができます。年取ったからといって、のんびり漂うだけという必要も無い。きちんと、最良のセーリングを味わえるという事は大事な事かなと思います。

たまにボートに乗り換える方もおられるかもしれませんが、一生現役のヨットマンで居る事もできます。旅を楽しむにはヨットマンズボートも有とは思いますが、あくまでセーリングを楽しんで来られた方なら、楽に楽しめる方法を考えた方が良いかと思います。

もうひとつの方法は、若いクルーを捕まえる事です。その彼に動いてもらうのも方法でしょう。でも、昨今ではなかなかいかないし、クルー頼りになりますと、少し動きが鈍くなります。それで、パワーアシストにするか、又は、サイズダウンか?ヨットが大きかろうが、小さかろうが、いつまでも現役でセーリングを楽しめるというのは幸福な事かと思います。ベテランの域に達すれば、激しくでは無く、繊細さをもってセーリングを楽しむ事もできるかと思います。そういう意味では、ヨットは若い人から老人に至るまで、それぞれのやり方ができる遊びかと思います。

若い時はパワーを持って臨める、それもひとつ。年をとってきたら、繊細さをもって望む。いずれもセーリングの楽しみ方であると思います。いろんな場面での、感触を味わうというのも悪く無い。

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