第十六話 老人と孫

ある老人は孫を連れてやってくる。ちょっと小ぶりだがピカピカに磨かれた船体。ちょっとクラシックで、入念に塗られたニスの輝き。これがおじいちゃんの自慢です。そのヨットに小学生ぐいらの孫を連れてやってくる。お父さんとお母さんは仕事で忙しい。

ちょうど良いぐらいの風の時は孫を乗せてセーリングに出る。孫にも舵を持たせて、遊ばせる。風が強すぎる時は、一緒にメインテナンスもやる。なかなか良い光景です。

そうだ、シングルハンドを練習して、うまくなって、孫をセーリングに誘いましょう。孫にセーリングを伝授しましょう。孫に自慢のヨットで、遊ばせてあげましょう。きっと良い経験になると思います。それはオーナーにとっても、孫にとってもです。海でセーリングができる経験というのは、誰でもできる事ではない。自分の子供はもはやついて来ない。ならば孫です。可愛い孫に、自分の特殊技能を教えてあげる。孫はお父さんより、おじいちゃんを尊敬すらするかもしれませんね?乗せてあげるでは子供は面白くありません。自分で操船するところに面白さがある。ですから、孫に指導しながら、舵を持たせて、主導権を少し与えます。子供は嬉々としてやると思いますね。小学生ぐらいからはじめると良いかな?

少しづつ慣れてきたら、ちょっと強い風の時でもやらせる。按配を見てですが。子供は、ジュース与えられて、コクピットに座っているだけでは面白く無いんです。子供でも、自分が運転しているという気分は、特別な何かになったような気分になるでしょう。そして、おじいちゃんは、この時はクルーになるのです。やたらと危ないとかが先にたちますが、ちゃんとライフジャケットを着させて、無理さえしなければ大丈夫。

子供の好奇心は旺盛ですから、いろんな事を知りたがる。ヨットと海の事はおじいちゃんに聞け。親ではできない事かもしれません。

そんな光景が海外で良く見かけられます。小学生ぐらいの女の子が舵を握っている。おじいちゃんは、コクピットでのんびりしてます。ある時、孫とふたりで、お母さんが作った弁当持ってマリーナに行き、ふたりでのんびり木部にニスをペタペタ塗ってる。こんな事さえ、子供にとっては楽しい。急ぎはしない、のんびりです。今日中に終わらなくても良い程度。コツは孫を主体にしてあげる事でしょう。

そんな光景を日本でもたくさん見れるようになったら良いなと思います。皆さん、孫をお持ちの年齢ですから、是非、孫を誘ってみたらどうでしょう?ヨットを自由自在に操船できるおじいちゃんは、実にカッコイイのです。知らない子供にとっては、ヨットは別世界の乗り物です。子供は乗り物が大好きなのです。

それで、子供はキャビンが好きか?と言いますと、そんな事は無い。キャビンでじっとしていたのでは楽しくないのです。子供は本能的に何が楽しいかを解っています。それが、大人になるにつれ、自分の楽しさが解らなくなって行く。きっと、孫と一緒に乗ると、楽しさを教えてくれるかもしれませんね。遊びの事は子供に聞け、子供は遊びの天才ですから。それで、自分が遊ぶには、子供になるのが一番。子供はじっとしているのが嫌いです。どんなに豪華キャビンだろうが、温水だろうが、関係ないわけです。キャビンは寛ぎ、セーリングは遊び。遊びは面白いが、キャビンは面白いわけじゃない。この二つは別なものです。結局、面白さを求めるか、寛ぎを求めるかの違い。

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