第八十話 セーリングを遊ぶ
| セーリングに関するノウハウはレーサーにとってのみあるわけではありません。クルージング艇という言葉が横行する中、頑丈でありさえすれば良いという話も聞きます。それで、太いマストになったりして、重い排水量だったりもしてきました。それらは確かに外洋を目指す場合には必要かもしれませんが、一般の沿岸程度のクルージングには、そこまではどうか？という疑問もわきます。 クルージング艇が、楽な操作一辺倒で来て、セーリングさえもしなくなった時、装備は増え、確かに便利になった。しかし、同時にセーリングを遊ぶという機能については低下してきている。まあ、セーリングしないのですから、関係無いかもしれませんが。 セーリングを遊ぶというのは、セールを出して移動すれば良いという程度から、いろんな操作を遊ぶという事もあります。ただ、舵を握って、時折タックしたりする程度、たまたま良い風が来たら、ちょっと良い感じ。それをもっと遊ぶ、積極的になるという事を考えた方が、より面白いかと思います。だからと言って、レーサーというわけでは無く。楽な操作というのは、操作をしないという事では無く、楽に操作をするという事です。それと操作をしないというより、操作そのものさえも遊ぶ。そこで、レーサーなんかがやっている作業を少し取り入れて、それも楽に操作できて、より快走を積極的に遊ぶ。良い風が吹いてくる、向こうあわせのセーリングでは無く、より求めるセーリングをした方が絶対面白いと思うのですが、いかがでしょうか？ 面倒な操作はしたくは無いのですが、それが楽ならやれます。やって、より快走が味わえる。つまり、セーリングそのものを積極的に遊ぼうという事です。但し、レーサーとの違いは、クルーが居ない場合もありますので、シングルでも同じ事が簡単にできる事が必要でしょう。 セーリングを遊ぶというのは、ただセーリングするだけでは無く、いろんな事をして、よりスムースな、より積極的なセーリングを求める事です。それは知識を必要としますし、それに対応する操作もします。それが面倒なのでは無く、面白いに変わる事です。 セールは上げれば良い、それで終わりでは無く、その時の風に応じて、どこまで調整ができるか？ 角度もあれば、形状もある。それを調整する事によって、走りは変わる。それをいろいろ遊ぶ事ができる。そのいろいろな調整とその結果、変わる走りを、いろいろ試行錯誤しながら遊ぶというのがセーリングの遊び、ですから、いろいろやった方が面白いわけです。 ブームバングを使い、バックステーアジャスターを使い、アウトホールやハリヤードのテンションを変える。シートをリードしているブロックの位置を変える。そういう事で帆走が変わる。そこが面白いのではないかと思います。それには知識も必要ですから、学ぶ必要もあります。 クルージング艇では、コクピットの邪魔にならないように配置しているかもしれません。でも、セーリングを遊ぼうと思うと、それらは使いにくい。バングはあるが、使った事無い。バックステーアジャスターなんかついてもいない。マストは太くて、マストベントなんかとうてい無理。 そうでは無くて、一連の作業がコクピットに集中して、舵を持ったまま、それも楽に操作ができる。バックステーを引けば、見る見るうちにメインセールのドラフトが浅くなっていく。そうすれば、強風時はもっと楽に帆走ができるようになる。メインのトラベラーのブロックとシートの操作で、セールツウィストがあきらかに出せる。それがどんな影響が出るのか、を学び、体感していく事で、実に面白い、積極的な快走ができる。そういう一連の操作は、スピードが上がるだけでは無く、やった方がより帆走が楽にもなるのです。 そういう事を考えた時、デイセーラーの考え方が良く解ります。デイセーラーはセーリングを遊ぶ事が主眼です。重心の低さも、セール操作のし易さも、全てここにあります。全てのデイセーラーがジブをセルフタッキングにした。ジブの操作には限界があるからです。上りではOKですが、落とすと、セール形状をうまくコントロールできなくなります。ならば、メインセールを主体にコントロールして、ジブは楽にタッキングができる方を取る。それに落として走る時はジェネカーを使う、或いはジブブームを使う。メインのトラベラーはかならず、コクピットか後部にある。その方が楽に操作できる。 こういうヨットは今までありませんでした。セーリングをと考えた場合はレーサーのようにクルーが必要だった。クルージングを考えた場合はセーリングがなおざりになった。デイセーラーはクルー不要であり、操作が楽で、それで尚且つセーリングが遊べるヨットです。 トラックやキャンピングカーでドライビングを楽しむ事は無い。かと言って、レーシングカーでは荷が重い。だから、デイセーラーはちょうど一般の方々が楽しむスポーツカーと言えます。低重心を楽しみ、スピードを楽しみ、ハンドリングを楽しむ。それがとっても安心のうちにできる。スポーツカーがそういうコンセプトを持つ為に、ボディーや足回り、エンジン等々がそこに合わせてデザインされ、造られます。それと同じ事がデイセーラーにも言えます。 デイセーラーがスポーツカーと同じだと言っても、キャビンはあるわけで、ただ狭いというだけです。 極端に遠出をしない限り、それで充分使えます。クルージングもできるわけです。セーリングが面白いヨットなのです。クルージング一辺倒の方々にも、是非、気楽な、それでいて面白いセーリングを遊んで頂きたいと思います。 |