第八話 セーリングはスポーツだ

ちょっと出かけて、どこかに上陸してランチを食べて帰ってくる。そんな使い方は多いかもしれません。決してそれを否定はしませんが、そればかりじゃ面白く無いと思います。それでセーリングをスポーツとして遊ぶ事をお奨めしています。スポーツと言いますとレースと思う方は多いのですが、レースするだけがスポーツでは無い。ジョギングしたり、サイクリングしたり、そういうのと同じ、否、もっといろいろあります。

ヨットをきちんとセーリングさせるには、頭も使う、これ頭脳のスポーツです。体も多少は使う、これは肉体的スポーツですね。ヨットにはその両方を使って、より良い、良いというのはフィーリングとして良い状態、を作り出す事です。つまり、頭脳、肉体、フィーリング、この三つが動く。そういうスポーツです。

ヨットの良さは、例え、この、三つがあるレベルに達しないとセーリングができない。というものでは無い事です。初心者のレベルからプロのレベル、もっと上まで、誰でも始める事ができ、味わう事ができる。そういう寛大さがあります。うまくなれば、省エネルギーで最大のフィーリングを得る事ができる。つまり、頭で考えて、それを体が実行し、それを感覚で捉える。そのフィーリングを頭脳に送って、また考え、実行し、フィーリングに来る。このサイクルです。このサイクルをぐるぐる回しながら、少しづつレベルアップしていく。すると何が良いかと言いますと、フィーリングが良くなる。
フィーリングが良くなるというのは、は単純に良い悪いの問題では無く、いろんなフィーリングを楽しむ事ができるという事です。スリルを恐怖と感じた初心者の頃、それが面白さに変わる。つまり、面白さの範囲が広がっていく。それは知識が増えた、体が慣れた、操船が効率良く最小のエネルギーで動けるようになった。そういう事があると思います。すると、最初は100のエネルギーを、例えば、頭脳に30、体に60、フィーリングが10程度だったのが、頭脳が30、体が50、フィーリングが20とか、段々割合が変化してくる。しまいには、フィーリングの割合がもっと多くなる。それこそ、味わいを遊ぶ事ができる。

どこかに何時まで着かなければならないとか、誰よりも速く着かなければならないとかがありますと、フィーリングに構ってはいられない。それもより速く走る事を目指していますから、スポーツではあるかもしれませんが、ここで言うスポーツは、あくまでフィーリング優先です。速く走るフィーリング、
ヒールした時のバランスを感じるセーリング、波があって、それを上手いこと舵さばきをしながら感じるフィーリング、ギリギリの上りを走るフィーリング、ダウンウィンドのフィーリング、いろいろあるでしょう。うまくなれば速くなる。これは当然ですが、同時にフィーリングを大事にする。微風で走らなくなったら、それでも考えようによっては、この風でもどんな風にセールを、舵を扱ったら良いかと考えて、少しでも変化したら、その時のフィーリングはどうか?いろんな遊び方も考えられる。まるで、子供が昔、自分で遊びを創造したように、想像し創造する事ができる。サーっと走って、その場で
180回転して走るとか?或いは360度回転して、また走るとか?どこかに行こうとするなら、馬鹿馬鹿しい事ですが、この場合は面白いかもしれません。遊びですから。それがスムースにさっとできると、いざという時でも、何でも対応できますね。そのフィーリングを面白がる事です。自由自在のセーリングです。

その為には練習が必要です。練習はただどんどん乗る事です。それも漫然と走っているだけでは無く、理解するまで、タックの手順、効率の良い手順、舵の切り方、タイミング、自分の移動、そんな事を遊びながら、慣れて行く。セールトリミングの知識を習得していく。うまくなれば、必ずフィーリングも違ってくる。

ランチするには何の習得も必要無い。でも、セーリングしようと思ったら、いろいろある。どっちが面白いでしょうか?ランチする相手によってはランチの方が楽しいという事もあるでしょう。そういう時はランチを楽しむ。そうで無い時はセーリングをスポーツする。臨機応変です。

スキーに行って、スイスイ滑る人を見て、羨ましいと思った事無いでしょうか?それと同じ感覚をヨットでも得ようという事です。スキーは限られたエリアを滑っている。競争しているわけじゃない。それでもうまくなると面白い。それは何故か?多分、フィーリングでしょうね。気分が良い。

ヨットはいろんな使い方ができますが、このスポーツセーリングとしての捉え方を実行しますと、ランチするのとは違う面白さが出てくる。軽く汗かいてくる。そんな感じ。いろんなスポーツがありますが、それぞれにフィーリングが違います。ヨットはヨットならではのフィーリングがある。それを遊んでみるというのが面白い。他のスポーツはみんなそうしています。ヨットでも面白いはずです。

そして幸いキャビンがあるので、アフターセーリングはちょいとうまいコーヒーで締めくくる。寛ぎの瞬間。緊張したセーリングの後は、実に格別ですね。

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