第七十七話 工業製品

マリーン業界においては欧米が先進国で、日本は後進国です。ですから、ヨットやボートという完成品においては確かに欧米の方が進んでいます。しかしながら、全てにおいてというのは違うような気がします。

ヨットやボートというのは完成品の事を言いますが、その完成品を造るに当たっては多くの材料が使われています。それら部品はマリーン用に開発されたものも多くありますが、陸上の技術や素材を使った部分もたくさんあるわけです。日本はその陸上の素材や部品という意味においては先進国で、技術レベルは高いし、日本製という事で信頼を受けています。ガラス繊維や樹脂、塗料なんかもそうでしょう。エンジンなんかも特に信頼性が高い。

そういう意味では技術先進国ですから、良い素材を日本は開発しています。最近の話題ではPBO繊維(ザイロン)なんかもそうです。ただ、その素材を使って、ヨットに応用する時、日本にはその応用例が無い為、ヨットに使われるに限っては、また欧米に聞く事になります。そこがちょっと悔しい。海外では艇数が半端な数ではありませんので、リギンだけの会社とか、マストメーカーとか、専門会社が数多くあり、ノウハウも蓄積されています。しかし、日本ではマリーン業界だけを取ってみますと、零細企業ばかりで、資本力とかも大差がある。日本の工業製品を作る会社が、マリン業界に入ってくると、そういう知識はこちらの方が上だろうという事もあるわけですが、なんせ、マーケットが小さいので、彼らがマリン業界に直接入る事は無い。

この大きな違いは、欧米では、例えば、日本の材料、技術を応用してマリン用と銘打ってくる事があり、日本では技術はあるのですが、マリン用とは言いません。よって、みんながマリン用と記載されている言葉に魅かれてしまう。そっちを信用するなんて事がある。材料は同じだったり、その部分の技術については日本の方が上だったりする事もあると思います。ですがマリン用というブランドを信用してしまう。

昔、油圧のラインにトラブルがあり、それを全部交換した事がありますが、日本の陸上の油圧専門の業者に全部変えてもらいました。もちろん、その方が遥かに良かった。確かに、ヨットというノウハウにおいては欧米の方が先進国ですから蓄積がある。しかし、部分においては日本も非常に優れています。場合によっては日本の方が上です。

実はある議論があり、それは塗料に関してですが、マリン用と銘打った塗料と、日本製の塗料ですが、専門の方に聞くと、そのマリン用の塗料として売られる物と、日本製の例えば車用とかに使われる塗料とどっちが良いかとなります、日本製を使ってもまったく問題が無い。ただ、マリン用とは言わないだけのような気がします。相手国によっては、日本側の方は、向こうは農業国ですよ、遥かに日本の方が進んでいるという話もあります。質だけでは無く、種類の多さ、きめの細かさ、日本人ならではです。

よって、海外のノウハウを手に入れつつも、部分によっては日本の陸上の方々にお世話になる。良い所取りですね。ただひとつ、究極とか、凄い部分になると外国製が良い場合があります。それは日本では需要の少ない部分においては、あまり熱心では無いという所にあるようです。

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