第七十五話 最近の傾向

お気づきの方も多いと思いますが、このところ舵誌を見ていますと、デイセーラーが取り上げられる事がおおくなりました。私としては実に嬉しい限りであります。だからと言って、すぐにこれらのデイセーラーがどんどん増えるとは思えませんが、でも、このジャンルが、無意識のうちにみなさんの心の中に浸透していく事は間違い無いと思います。何年か前までは誰も見向きもしなかったこれらのヨットが、今では多くの方々が知る事になります。知らなきゃ想像もできませんが、知れば、どんなんかなと想像する事もあります。最初ですから、そんなもんでしょう。

多分、間違いなく、こういうデイセーラーが、実にゆっくりの足取りかもしれませんが、確実に増えてくると思っています。そう願ってますというのが本音ですが。過去20年ぐらいの有り様を見れば、活き活きとしたヨットが実に少ない。それじゃ面白く無いはずです。多分、楽しさだけを求めてきたのではないかと思います。確かに、それを味わってこられたはずです。しかし、やがて、楽しさだけでは物足らなくなる。装備があるから楽しいわけじゃない。それらを使って、行動するところに楽しさがありますが、しかし、楽しさだけを求めるには限度がある。それで、その楽しさ以上の何かを、セーリングに求める。

昔、昔、まだまだ便利グッズが無い頃、多分いろいろ工夫しながら、苦労しながら載っていたんだろうと思います。しかし、きっと今より面白かったのではないかと思います。そこに快適、便利装備が導入されはじめ、面白さから楽しさを求めるようになってきた。それらを使って、確かに楽しんでもきたんだろうと思いますが、やがて、やはりもうワンステップ上らないと、楽しさだけではちょっと物足りなくなってきた。それが今の状況かと思います。その証拠に動かないヨットの方が圧倒的に多いのですから。

さて、次のステップは、快適装備、便利装備を駆使しながらも、面白いセーリングを体験することではないかと思います。デイセーラーであるかないかは別にして、きっとこれからは、徐々にセーリングを遊ぶ方々が増えてくるのではないか、セーリングの方が面白いと解る意味でも、これまでの事も無駄ではなかったと思います。

車が今ではオートマチックになったように、ヨットもそういう傾向でしょう。操作は難しいより、楽な方が良い。でもセールフィーリングはそのままに感じられなければならない。そうでなければヨットである意義が無い。それは電動ウィンチになったからと言って削がれるものでは無いと思います。むしろ、楽になった分、どんどん細かくでも調整をする気にもなります。コンピューターで自動調整になるなら、それは面白さが失われてくると思いますが、少なくとも、自分の任意で調整をする。それが大事かと思います。もちろん、舵も自分の手で握る。そうすれば、セールフィーリングが損なわれる事は無いと思います。ヒールもすれば、快速にも鈍足にもなる。それは変わらない。

何を味わうかと言って、自分で調整して、どんな変化をもたらすか。どんな走りになるか、そういう事だろうと思います。それをマニュアルでやるか、電気や油圧の力を借りるかの違いで、セールフィーリングさえ維持していけば、後は便利で、パワーアシストだろうが、多いに結構ではないでしょうか。そのうち、動くヨットが動かないヨットより増えてくるかもしれませんね。そうなると、ヨット界は実に面白くなります。その効果は他のオーナーや新しくヨットを始める方々にも波及するでしょうし、また、マリーナにも影響を与えます。そういう日が来るのが楽しみです。

次へ         目次へ