第七話 こだわり
| こだわらない方が良いと言います。しかし、凡人である我々は何かが好きになって、それにこだわってしまう。これは良い、これは悪いとかですね。何にもこだわらないのは、何にも興味が無いか、或いは、何であっても、受け入れる事ができる。そのままを受け入れる事ができるのかもしれません。つまり、何かを好きになって、こだわって、徹底的にこだわって、そこを突き抜けた時、何でも受け入れるようになれのかもしれません。そんな心境にはまだなれませんので、こだわります。 ヨットにこだわると、排水量がどうこう、バラスト比がどうとか、幅とか、セールエリアとか見かけとかにこだわります。何でも良いわけじゃない。こんな乗り方には、こんなヨット、あんな乗り方にはあんなヨットが良いとか。それはそれで良いんだろうと思います。何にも興味の無い、こだわらないよりも良いと思います。こだわるのも楽しいものです。それが自分のスタイルです。これが突き抜けていくと、自分のスタイルが無くなる。無くなるというより、何でもできるようになるのかもしれません。達人の世界。そうすると、何でも楽しめるのかもしれません。こだわれば、自分のこだわり以外では今一楽しめないかも？それでも、一挙に達人にはなれないので、こだわれるだけ、こだわって、楽しむ事をする。それでも良い。 私のこだわりはセーリングです。セーリングそのものをどんどんやる事にこだわる。その為には、セーリング性能が良いのが良い。しかも、シングルで楽にやれるのが良い。ちょっとクラシックなデザインも好きだし、逆に、キャビンにはこだわらない。パッと来て、サーっと気持ち良くセーリングできれば良い。微妙なフィーリングを味わったり、スピードを味わったり、ダイナミックだったり、いろんなフィーリングを自由自在に、しかも安心の中で味わう。信頼できるヨット。 誰もがみんなこだわるかと言いますと、そうでも無い。でも、一回は徹底的にこだわるのも悪く無い。そして次に、それを突き抜けるにも、一度はこだわらないとそうはならないのでは？こだわって、そのスタイルを続けていければ、それもまた楽しい。悪いのは自分のこだわりを人に押し付ける事でしょう。私もひょっとしたら押し付けているのかもしれません。嫌々、お誘いしているだけです。お奨めはしますが、押し付けはしません。人のヨットに乗ったら、批判はしない。でも、お誘いはするかも。もっとセーリングしてみませんかと。究極的には本人さえ良ければ良いわけですが、こんな世界もありますよと言う事は悪い事ではないと思います。 セーリングの世界は、今まで、あったようで無かった世界ではないか？ヨットなのにセーリングの世界が無いなんてのはおかしな話ではあるのですが、私の言うセーリングとは、クルージング派が、セーリングを純粋に遊ぶセーリングです。レースでは無く、ただピクニック的にのんびりでも無く、自分のペースで、今の自分の技量を高めていく、そういうセーリングの仕方です。そのセーリングをやって、そこからいろんなフィーリングを味わおうというやり方です。これは以外と無かったセーリングではないかと思います。無い事は無いでしょうが、する人は少ない。 野球でもサッカーでも、囲碁でも将棋でも、釣りでも、テニス、卓球、写真が趣味の人でも、ゴルフだって、パチンコだって、カラオケでも、みんな練習してうまくなろうとします。それが当たり前かと思います。それは腕前が、自分の楽しさを向上させると解っているからです。ところが、ヨットは違う。 車も自転車も、バイクもそうですね。ある程度乗れるようになると、それ以上である必要性は一部の人だけになる。乗り物とは、乗る事が目的では無く、移動が目的だからです。とりあえず乗れれば、目的を達成する事ができる。 ヨットは乗り物ですが、他の乗り物と同じ扱いをしてしまうと、ある程度乗れればそれで良いとなります。ところが、考えてもみて下さい。確かに、移動に使う事ができますが、他の乗り物と比べて、遥かにその特性は薄い。ヨットは乗り物として、移動で見る事もできますが、もっと特性を生かした乗り方がある。それがセーリングです。移動ではありません。そう考えると、これは趣味であり、スポーツです。そして、ここからが肝心です。趣味やスポーツは、前に書きました通り、うまくなった方がおもしろいという事です。 思い通りのセール展開をして、走るセーリング、そこから受けるフィーリングとはどんなものか？それがセーリングから得られる成果です。目に見えない成果ですから、解りにくい。しかし、多分、スキーやスノーボードで、自然の中を自由自在に走るような感覚、スリルもあるでしょう。だからこそ、練習してうまくなる必要がある。練習をしながら、腕を上げていって、その練習を楽しむ。ここに至っては、ヨットは乗り物ではありますが、スポーツと化す。スポーツだからと言って、激しいばかりじゃない。緩やかなスポーツから、スリル満点まで、それは自分次第、自分の熟練度と一緒にレベルを上げながら、そのフィーリングを楽しむスポーツです。スポーツはレースと相場が決まっていましたが、誰がそう決めたんでしょうか？レースに出ても良いですが、出なくても良い。好きにすれば良い。でも、セーリングは面白い。ですから、多くの方々に、これからは、セーリングを遊んで頂きたいと思っています。そこにこだわっています。 皆さんもこだわってみてはどうでしょう。自分の好きな事に。 |