第五十三話 時代の流れ

個人的な意見がどうであれ、全体の総意というもので時代の流れができてきます。携帯電話が嫌いだと言っても、この時代、携帯電話無しではやりにくい。それが時代の流れかと思います。陸上のそこら中が開発されてきた今日、周りの海に目が行くのは当然な事、海水浴など昔から親しんできた海、遥か水平線を眺めながら生きてきた。それが、船という手段で誰でも行けるようになってきた。

船で行けるようになって、それじゃあ誰でも簡単にどこへでも行けるのかと言うと、そうは行かない。海はまだまだ未知の世界、冒険の世界です。物理的には行けるけれども、心理的なハードルがまだまだあります。それにしても、この時点では船の所有という満足感があったに違いない。海と陸は全く違う。海は冒険のフィールドです。それは個人的な意見というよりも、総意による影響が大きいのではないか?

しかしながら、徐々に、遅い足取りでありながらも、海へ人は出る。商船とは言いながらも、毎日、たくさんの船が世界を回り、一部はヨットで世界を回り、いろんな人が動き回る。それが徐々に浸透していく。いろいろ探せば、知り合いの誰かがヨットかボートを持っていたり、そういう身近なところで海に関わる何かが増えてくる。徐々にではありますが、必ずそうなる。

すると、どこかある時点で、海に対する冒険性が少し薄らいでくる。総意として、そういう印象が出てくると思います。ヨットやボートで無いにしろ、釣りや海水浴、サーフィン、ウェークボード等々の海との関わり、身近に船を所有する人達、そういう影響が少なからず出てくる。その影響で、既にヨット、ボートが増えてくる。そういう時代かと思います。それが今の時代、この時代は所有の時代、それがもっと総意として、海に対する印象がまた徐々に変化していきますと、所有から実際に漕ぎ出す時代になってくる。

すると、ヨットでそこら中をセーリングして回る事自体は何でも無い事になってくる。そういう時代になりますと、今度は世界を目指す人が増えてくる。欧米なんかはそうですね。日本は歴史がまだ浅いのでそこまでは行っていない。しかし、今の時代は、あこがれから所有になり、そして実際のセーリングに移行する時代、時代をリードする人達にとっては、もうセーリングする時代になってきていると思います。

同時に、その後をついてくる人達は憧れから所有へとついてくる。今ヨットを所有されている方々はその先端におられると思います。時代を担う方々です。その今あるヨットがいかようになるかによって、未来が決まっていく。そして、私が思うに、これからは、行動の時代、所有から運営の時代に入ってきた。合理性が出てきて、先端におられる方々の中でも、運営ができない方々は後進に道を譲り、運営ができる方々はどんどん出る。

今必要な事は、遠くでは無く、近場で、誰でも、どんなヨットでも、セーリングに親しむ事かと思います。それが普通になる時代が来ると、その中から世界を目指す人達が出てくる。次には、もっと多くの人達が世界を回るようになる。そういう時を過ごしながら、各人が自分のスタイルを築き、独自のスタイルで、楽しむようになっていく。

今の時代は、各個人のスタイル云々の前、ずっと前だろうと思います。それは個人がどのように考えていたとしても、時代の流れであり、個人が自分のスタイルを確立していると思っても、全体としてはただマニアックと思われるだけかもしれません。個人のスタイル、それが尊重され、認められ、そのように全体が動く。全てのオーナー、ヨットやっていない人、マリーナ、全体の総意です。すると、個人のスタイルが実にやりやすくなる。

今はもっと前の時代ですから、今ヨットを所有されている方々、最先端におあられる方々が、これから所有だけに満足できなくなり、セーリングを始める。それが必要だろうし、それは多分、そういう流れになるだろうと予測しています。それが、やがては、セーリングを普通の事としてしまい、誰でも気軽に楽しめるようになる。日本が欧米人のように世界を目指すのは、その先だと思います。

ちなみに、欧米人は仕事引退して、夫婦で世界を回る人達が多い。動けなくなったら、ヨットを売って国に帰る。そんな人も居て、何年も回っている人達が居ます。それが決して珍しくは無い。博多にも良くいろんな国からクルージングで来ています。また、同時に欧米のマリーナに行きますと、ヨットに住み着いている人達、毎週末はヨットに来てる人達、近場のクルージング、デイセーリング、ディンギーやいろんなヨットが、いろんなスタイルで運営されています。日本はいきなり、そういう時代にはならないので、今はセーリングする事ではないかと思います。何も私がそう思わなくても、時代の流れはそうだという事です。そこから徐々に、総意が出来てきて、時代を作り、また最先端の人達が次の時代にはいっていく。ひょっとすると、スタイルというのは、個人がひとりでできるものでは無く、総意の中でできるものかもしれません。

ですから、今最先端におられる方々に、今、セーリングをどんどんやって頂いて、楽しんで頂きたい。それが特別な事では無く、普通の事として。すると、後から来る人達、それを見ている人達、今はヨットに関係無いが、その話を聞いている人達、いろんな人達がそれを知る事になります。まずは、多くの人達が、自分がするかしないかは関係無く、そういう遊びをして楽しんでいるという事を知って、少しづつそれが何ら特別な事では無いんだという印象、総意が出来上がって行ってほしいと思います。普通の事をするのに、何ら努力は必要無い。自然とできる。ヨットやるなら、そうするのが普通という総意。それが出来たら、日本もヨット花盛り。

車は普通の事になりました。でも、車に乗ると事故がたくさん起こっています。車はとっても危険なのです。海に危険性を感じるかもしれませんが、車のように普通と感じるようになると、危険があっても気をつけて乗ろうと思うし、危険だから乗らないとは思わない。それだけ、車は普通の事になっている。ヨットが普通度が高まれば、それに応じて、マリーナ整備等、環境は改善されていく。

セーリングを普通の事として、楽しみましょう。

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