第三十四話 観察する

ヨットに慣れない方は、ヨットについて良く考えてみましょう。解らないと投げ出す前に、自分なりに良く考える。幸い、ヨットはコンピューターで走るわけではありませんので、良く観察して解る事も相当あると思います。

風はセールの上をスムースに流れる必要があります。スムースに流れるというのは、極端なカーブなどがあるとそこで流れが鈍る。川の水の流れが、何かがあると流れが乱れたりします。でも、流れが遅い、つまり風が弱いと、大きなカーブでもそれに沿って流れ、速くなるときれいに流れなくなる。揚力を受け取る側の船体には限度があります。それで、風が弱い時はセールカーブを大きくして、より大きな揚力を造る。逆に風が強い時は、大きな揚力ではヨットが支えきれないので、カーブを小さくして、揚力を減ずる。こうやって、その時の状態に合わせて、より良い適切なセールカーブを探し、調整します。

すると、セールのカーブを調整するにはどうしたら良いかという事になります。今度はそれを考える事になります。これもじっくり観察していただきたい。考えていただきたい。その前にセールについて少し知識が必要になります。メインセールのラフは直線では無い。カーブしてます。何故かと言いますと、セールにカーブをつける為です。それで、マストに沿って、メインセールは展開されますが、
真っ直ぐなマスト(前後に)に沿うとセールはカーブします。マストを後ろに引いて、そのマストの曲がり具合がセールのラフのカーブと全く同じカーブを描くとセールは完全にフラットになってしまう。
つまり、バックステーアジャスターでそれを調整する事になります。という事はこれが無いと、その調整はできない。その分遊べないという事になります。

また、上部はバックステーで、下部はブームから出たアウトホールで調整する。ゆったり張ったり、ピンと張ったり、これはそういう遊びです。それで、どんな走り方をするかを遊ぶわけです。やりようによっては、風をどんどん逃がしていたのが、この調整で、もっと快走を味わえるかもしれません。

ジェノアはもうちょっと複雑ですが、風が強いとフォアステーが丸くなる、カーブを描く。風が弱い時はフォアステーは真っ直ぐです。強風用のセールはフォアステーが丸くなるのを前提に丸くなった時に、セールがフラットになるようにカットされる。逆に軽風用のセールはフォアステーは真っ直ぐですから、その時に大きなカーブを描くようにデザインされる。ファーラーはその全ての状況で使われます。バックステーを引くと、フォアステーも後ろに引かれますから、フォアステーのカーブは減じられる。それで、シートを引くとセールはフラットになっていく。でも、重要なのは、シートのリードブロックの位置です。前にやれば、リーチにテンションがかかって、フット側は緩くなる。後ろにやれば、フットにテンションがかかって、リーチは開く。開けば風は逃げる。その調整をどこにするかを遊ぶわけです。風を入れたり逃がしたり、こうやって調整しながら、動きを遊ぶ。

動けば良いという次元なら、こんな事を深く考える必要は無い。しかし、セーリングを遊ぶのなら、レースだろうが、クルージングだろうが、このゲームをしない手は無い。やっても良いがやらなくても良い。何を遊ぶかの問題です。レーサーは必ずやりますが、クルージングはあまりやらない。でも、クルージングでもやれば面白い。ヨットである事にはかわりないのですから。面白さをどこに求めるかです。決して、大変な事をしようという事でもありません。セーリングを遊ぶなら当たり前の事です。それが解って遊べるなら、セーリングはもっと面白くなる。

最低限扱うのは舵とメイン&ジェノアの各シート、それだけでも走れる。これらはセールカーブはおいといて、風に対する角度を変えている。でも、ここにカーブを変化させる事を加えてみようという事ですが、当然ながら、扱うシートが多くなる。でも、やった分だけ、走り方が変わる。面白さが出てくる。全部一辺にやらなくても、少しづつ、今までシートしか調整していなかったのに加えて、ひとつづつ加えていっても良いかと思います。要は、何を遊ぶか、何を面白いと思うか、調整するのは面倒くさいと思えば、そんな事はやってられない。でも、ヨットというのは、調整して遊ぶもんです。どこまで調整するかで、どこまで深く入っていけるかになってくると思います。10年、20年のスパンを考えますと、深さが無い場合は面白さに欠けて来るような気がします。逆に考えますと、どこまでやるかで面白さが変わる。自分次第という事になると思いますね。

シートを扱うだけでも面白いのなら、それでも良い。でも、やがてはそうでは無くなる。で、今度は少しづつ増やしていきます。それでも良いと思います。

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