第二十九話 デイセーリングを日常とする

2〜3時間のセーリングとしたら、何と気楽でしょう。最初からそう思えば、準備も簡単、行きがけにコンビニで、今なら暖かいペットボトルの飲み物でも買っていけば、それで良い。マリーナに来たら、真っ先にエンジンかけて、暖機運転の最中に、カバーを取って、ハリヤードを設置して、すぐに出航できる。

マリーナを出たら、すぐにセーリング。メインを上げて、ジェノアを解いて、セーリング開始。上り、セールカーブ、アングル、タック、またセール見て、引いたり、出したり、方向優先なら、風のシフトに合わせて、風向き優先なら、常に風に対して同じ角度を保つように、同じセーリングでも走り方は違う。アビームがあり、ダウンウィンドがあり、集中してセーリングすると2〜3時間はあっという間かもしれません。

マリーナに戻ったら、さっと片付けて、クールダウン。熱いコーヒーをすすりながら、残った感触を味わう。言葉に書くとこれだけですが、これはやった人にしか解らない味わいです。2〜3時間の集中した時は何事にも代え難いフィーリングをもたらす事がある。

マリーナに来て、風が無かったら、こういう日はヨットを洗ってみよう。船内の片付けをしてみよう。整備をしてみよう。やっぱりその後はうまいコーヒーで締めくくる。

段々と自分がヨットに慣れていくのが解る。セールに付いたテルテールも最初はきれいに流れなかったのが、だんだんと理屈が解ってくる。ジブシートやメインシートだけではコントロールしきれないのが解る。舵もできるだけ切らない方が良いのも解る。適切なヒールアングル、適切なセールコントロール、そういうものに近づけば近づく程、労力は軽減できる。

自由自在になったと実感するには、相当に乗り込む必要があるかもしれません。しかし、徐々に、そういう域に近づいていく。ブローへのとっさの対応も、何かあった時の対応にも自信ができる。
そして、風見をしょっちゅう見ないでも、セールを見てたら風のシフトが解ったり、いろんな事を発見していくでしょう。何度も、何度もやれば熟達する。丁度、それは職人の世界と同じかもしれません。例え、単純に見える事でも、それを何度も繰り返すと、そこには、人には解らない、何かを発見する。自分の体験から新しいものを発見する。そういうところに意義がある。本を読めば、そこに書いてある事かもしれませんが、それよりずっと価値があるし、何より身についている。

そんな職人のようなセーリングをしながら、技術は蓄積され、フィーリングがどんどん前で出てくる。
技術は頭から体で覚える事に移り、その分、フィーリングが前に出て、より多く、より繊細な部分まで感じられるようになる。するとそこには、また別の世界がある。最初は技術の世界、そして次はフィーリングの世界。船の動きに合わせて、頭では無く、体が反応する事がある。車も自転車も、みんなからだが反応してます。それと同じように、慣れていけばいくほど、そうなっていく。車も自転車も集中して練習しますから、すぐにそうなりますが、ヨットはなかなか毎日と行かないので、多少の時間はかかるでしょう。それにヨットはそれ程単純でもありませんし。でも、続けていけば、みんなそうなる。

ここに至るや、どんなセーリングになるのか?想像してみましょう。きっと、面白いに違いないと思いますね。デイセーリングの中心はこんなセーリングかな?

その合間には、仲間や家族のクルージングもできる。自由自在で、仲間を乗せてあげると、これまた、どんな感じでしょうかね。オーナーは完璧に信頼されるでしょうから、多少のセールフィーリングを織り交ぜてやると、きっと楽しんで頂けると思いますね。実は、ゲストものんびりセーリングで楽しいのは最初の30分ぐらいじゃないかと思います。ゲストだって、ヨットならではのフィーリングをもっと得たいと思うのではないでしょうか。それには、まず自分がそれを堪能しておく必要があると思います。自分の自由度が上がれば、上がる程に、ゲストにも楽しんで頂けるかと思います。

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