第八十二話 プラス・ワン

小型船舶検査機構の統計によりますと、平成19年3月末現在で、日本に在籍するヨットは全国で11,929艇だそうです。そのうちダントツは神奈川県の2,177艇、2番目は兵庫県の1,085艇
九州全体を合計しても1,423艇で、神奈川県にも及びません。しかしながら、モーターボートになりますと、西側の方が多くなり、1位は広島の16,453艇、2位は愛知の11,686艇、3位に長崎が入り、11,021艇と続きます。多分、釣り関係が多くなるせいでしょうね。ちなみに、モーターボートの全国での在籍数は236,529艇となっています。ヨットと合計で248,458艇。約500人にひとりがボートかヨットを所有している事になります。

世界レベルで言いますと、非常に少ないのでしょうが、まあ、500人にひとりがボートかヨットを持っていると言いますと、まあまあかなと思いますが、しかし、ヨットに限っては非常に少ないですね。全体の5%に及ばない。ボートは釣りという明確な使い方が、この数を押し上げていると思いますが、ヨットについて、圧倒的な支持を得る使い方というのが確立されていないのかもしれません。釣りという明確な遊び方に比べて、ヨットは曖昧なのでしょう。何をすれば最も面白いのかが問題です。

今後、ヨットを延ばすには、この明確な使い方が確立される事が必要かと思います。どんな使い方であれ、多くの方々が支持される遊び方、面白いと思われる使い方です。考えてみれば、釣りはボートとは関係が直接には無い。釣りはボート無しでもできる。でも、ボートがあった方がより面白いという事でしょう。釣りそのものが面白く、ボートはそれを増幅させる役目です。残念ながら、そういう物がヨットには無いんですね。丘でも出来る面白い遊び、それがヨットを使うともっと面白くなるというような物が無い。

無い物は仕方無いので、何かヨットで面白い遊びを創造しなければなりません。多くの方々が、それを面白いと思い、それも近場でできる、誰でもできる事です。ここまで書きますと、ご推察通り、これはデイセーリングという事になりますね。レースでも良いんですが、ひとりでレースはできないので、何艇か集まる必要がある。集まる必要があるというのは、それだけ確立は低くなるという事になります。そうすると、自分だけでも遊べるデイセーリング、これが最も可能性が高い。ヨットの使い方の核になるべきです。

そうする為には、デイセーリングについて、可能性をもっと探る必要があります。想像して、もっと創造していかなければなりません。その面白さを広めていく必要があります。釣りしかしないというボートオーナーが居るように、デイセーリングしかしないというオーナーがたくさん居ても良いわけで、むしろそれぐらい面白い演出でなければなりません。

さて、どうしたもんか?といつも考えていますが、なかなかですね。簡単じゃありません。それは環境も必要なんだろうと思います。近所に寄れる所がたくさんあると、そこにしゃれたレストランでもあると、ちょいと行って、帰りにセーリングを堪能して帰るとか、そんな乗り方もできる。ところが、そうそう、そういう所は無いわけで、それに頼っていても仕方ない。そこで何か単独で出来る面白い乗り方を考えなければなりません。天候によっては出れないが、出れば必ずその面白い何かができる。そういうものが必要です。デイセーリングですから、セーリングを堪能するというのは当たり前で、それにもうひとつ何か楽しい事をプラスしたい。セーリング+ワンです。もちろん、セーリングだけでも充分に面白いと思いますが、もっと多くの方々をひきつけるには、もうひとつプラス・ワンがあった方が良いでしょう。その何か?

海に出て、どこにでも必ずある物と言えば海しかない。という事は海とヨットしか無い。そこでどうやって遊ぶか?セーリング以外に何かあるでしょうか?それが、今は仲間との集いになっていると思います。その集いになりますと、どういうわけかセーリングが疎かになる。疎かになるとセーリングの面白味が削がれるという結果になる。ヨットしようという方々は、ヨットで釣りをしたいという人は少ない。潜りに興味がある人もおられるでしょうが、これも機材をもっていくのも大変ですし、素潜りという手もありますが、いずれにしろボートの方が都合が良い。

という事は集いか、セーリングかしかない。今、所考え付くのは。仲間とセーリングを真剣にやって、ある程度走ったら、みんなでお弁当食べて、集いを楽しんで、そして帰りにはまたセーリングを楽しんで帰ってくる。或いは、セーリングを楽しんで、マリーナに帰ってきてから、ゆっくりお弁当を楽しむ。そんな感じになるでしょうか?もし、丸一日を予定していたら、みんなで2〜3時間ばかり、セーリングを真剣にやって、マリーナに帰って、ゆっくり、2時間でも3時間でもゆったりみんなで寛ぐというのでも良いのではないでしょうか?

ある北欧ですが、夕方から奥さんとふたりでワイン1本持ってサンセットクルージングに出るのが少し流行っているという話を聞いた事があります。日本はアルコールはいけませんが、何か違うしゃれたやり方もあるかも。

いろいろあるでしょうが、お奨めは、セーリングをまず2〜3時間堪能して、マリーナに帰って、すぐに家路につかず、ヨットで食事したり、ゆったり過ごすのが良いのでは無いか?その時のセーリングがどうだったとか話も出るでしょうし、みんなが真剣にセーリングすれば、今度はこうしようとかも出る。そんな話でも盛り上がるのが良いと思います。

つまり、集中した面白いセーリングと楽しい集いの組み合わせです。シングルの人だって、集いは無いかもしれませんが、コクピットでゆったりとその日のセーリングに思いを馳せる事ができる。バタバタ片付けて帰らなくても良いのでは?充実感のあるセーリングの後は、コーヒーの一杯が格別においしく感じるのではないでしょうか?そのおいしい一杯のコーヒーを味わう為にも、充実したセーリングが前提になければなりませんね。こういう集いとか寛ぎとかいうのは、セーリングの後の方が楽しいと思います。セーリングが面白ければ、面白い程、その後の寛ぎも楽しくなると思います。
ですから、セーリング中はみんなで、いかにセーリングするかに集中して、シングルでもそうですが、お楽しみは後でという事でいかがでしょうか?

セーリングと寛ぎを分けてやる事によって、どちらも充実してくると思います。両方が相乗効果を持つのではと思います。クルージングと言いますと、ついついセーリング中におしゃべりに夢中になったりしますが、そこをきちんと分ける事によって、楽しさ、面白さにメリハリが付くのではないか。
帰りのセーリングの終わり頃に、携帯電話からピザ屋に配達を頼んでも良い。今はいろんな出前もあります。桟橋まで持ってきてくれると思いますよ。或いは、自分達で用意したものでも良いし、兎に角変化をつける事が大事。でも、セーリングという変化は常にありますから、その話でいつも変化は宴会にまで及ぶと思います。いかがでしょうか?

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