第七十話 キャビンとセーリング

これまでセーリングについて強調してきました。しかし、一方で、キャビンを重視したヨットの使い方を好まれる方々もおられます。そういう使い方についての提案です。まず、基本的に、セーリングを楽しみたい場合は、できるだけ近場において、しょっちゅう行ける状態を作っておきたいものです。しかし、キャビン重視の場合、同じマリーナに何年も置いておくより良い方法があります。

キャビンを楽しむ、別荘的な考え方は、例えば、本物の別荘を考えますと、どこか自分が住んでいる場所とは違う環境を求めます。例えば、山とか海の近くとかです。決して交通の便が良い所をは考えません。そこに行って寛ぐ、普段はできない釣りをするとか、家族みんなで、普段とは違う、でも温泉に行くとも違う寛いだ感覚を得たいと考えます。それで、家も通常とは違うログハウスであったり、何々風であったり、便利さよりも、エキゾチックな感覚を求めます。まあ、別荘を持った事が無いので、実際はどうか解りませんが、多分こうだろうという推測ですが。

ヨットを別荘的に使うという発想はとってもいいものですが、別荘とは違う点がいくつかあります。まずは本物の別荘程は大きくないという事です。しかし、ヨットは動かす事ができる。それで、動く別荘と考えます。それは面白そうだとなります。マリーナに置いて、そのマリーナが楽しい場所であれば、それはそれで楽しめる。別荘のように、寝泊りして、そこを中心にいろんな活動ができるのであれば、別荘として面白い。しかし、残念ながら、マリーナはそういう環境に無い事が殆どです。マリーナは保管はしれくれますが、社交の場にもなりきれていないし、そこを基点に活動できるかというとちょっとそれも満足できない。それで、別荘的に使う、物理的には可能なのですが、雰囲気的、何か違います。それで、ちょっとクルージングに出ても、その範囲に何があるか?ちょっと寄ってそこで楽しめる事がたくさんあるなら、それも楽しめます。しかし、なかなかそういう場所が近くには無い。そうなってきますと、めったに使わないという現実が浮かび上がってくる。

そこで提案というのは、保管場所を変えるという事です。別荘的使い方というのは、所詮毎週とか毎月とか使う方は稀ではないかと思う次第です。それならいっそのこと、場所を変えてはいかがでしょうか?例えば、現在のホームポートから、ヨットで出る。近場の他県のマリーナを事前に調べて、状況を把握して選択します。そして、決まったら、そこにみんなでクルージングに行くわけです。そして帰りは、ヨットをそのマリーナに置いてくる。まあ、1年ぐらい置くつもりで。気に入ればもう1年延長しても良い。そして、今度行く時も、家族で出かけて行って、そこで動く別荘的使い方を堪能する。場所が変われば気分も変わります。それで、年に何回か行けるかもしれません。そしてまた、次に行く場所を他県に求め、同じようにそこまでクルージングします。そしてまた、そこにおいて帰ってくる。この繰り返しです。気に入った場所には何年も置いても良い。マリーナにいない時の管理や、そこに居るメインテナンスの業者などに、頼んでおきます。鍵も預けておきます。

こうやって、繰り返して、場所を変えながら、別荘的ヨットを楽しむ。これこそ動くヨットの真骨頂ではないでしょうか?キャビンを楽しむ事を優先的に考えるなら、思い切ってこういう使い方はいかがでしょうか?そうすると、結構、変化があって、面白いし、飽きないかもしれません。それどころか、かなり面白いのでは無いでしょうか?ご存知でしょうか、こちら九州には、関東のオーナーがヨットを置いてあるマリーナがあります。とても良い発想です。こちらは関東に比べて係留費も安い。ただ、一気に九州まで来る事は大変ですから、徐々に、徐々に、何年もかかっても良いわけで、日本にはいろんな所があります。瀬戸内海なんかもとっても面白いと思います。

つまり、キャビンを楽しむ別荘的使い方は、環境を変える事、本物の別荘はそれができませんが、ヨットはそれが得意技ですから、その得意技を使って、遊ぶ。それがキャビンを楽しむ、別荘的使い方ではないでしょうか。

結論、セーリングを堪能したいなら、できるだけ近場においておく。セーリングそのものに変化がありますから、それを楽しむ。キャビンを楽しむなら、場所という環境を変えて、その変化を楽しむ。
そういう方法はいかがでしょうか?難しいでしょうか?でも、その気になれば、簡単です。最初は近くの県で良いではないですか。それから、旅を楽しみながら、場所を変えていく。それも悪く無いと思います。

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