第六十一話 ヨットを自分の物にする

ヨットは購入すれば自分の物ですが、本当に自分の物にするには、それだけでは不十分です。例えば、仕事でもそうですが、言われた事をその通りにするのと、その仕事の内容、目的を理解して行うのとでは質が違ってきます。つまり、仕事を自分の物にするという事かと思います。

そうしますと、ヨットにおいても、ヨットスクールなんかに通って、知識と技術を学んだだけでは不十分で、自分のヨットをできるだけ理解して、その目的をも理解する必要があります。つまり、技術的にはまだ不十分だとしても、良く理解し、目的を理解する事によって、ヨットを自分の物にし易くなると思います。物事は学んだ通りになんか行きません。そういう時でも、自分の物になっていれば、どんなにでも対処ができようというものかと思います。

つまりは、たくさんの回数を乗らなければ、本当に自分の物にはならない。例え、何年所有していようとも、本当の自分の物にはならない。動かす事はできる。操船はできる。セーリングも一応できる。でも、まだ、本当の自分の物ではない。一応のレベルです。

頭で理解して、載って体で感覚として馴染ませる。そうやってはじめて自分の物になるのではないかと思います。そうなった時のセーリングの感覚とはどんなものでしょうか。それこそ一体感さえ感じるようになる。プロ並にうまくなるという事では無く、回数乗って、体に動きが馴染む感覚が必要かと思います。

ヨットを何度も買い換える方も少なくありません。乗り方が変わったりしますから、それも当然起こります。しかし、どこかの時点で、乗り込んで体で覚えるという感覚を掴む必要があります。そうしますと、ヨットが楽しくて、気楽で、面白いという事になってきます。どうせならそこまで行きたいもんです。昔、子供の頃、自転車に乗れるように練習しました。一旦、馴染んでしまうと、それから何年経っても、簡単に自転車に乗れます。車だって同じで、一旦馴染むと、他の車に乗っても、最初は違和感が若干あるかもしれませんが、すぐに手足のように動かせるようになります。それと同じ事ではないでしょうか。この場合、自転車もヨットも自分の物にしているわけです。

ですから、ヨットも同じように、できるだけ早い時点で、乗り込んで、自分の物にしておくと、その後のヨットライフの有り様が全く違ってくるでしょう。何年所有したかが問題では無く、回数です。年に数回しか乗らないのではこうは行かないと思います。でも、ワンシーズンでも回数乗り込んでおきますと、その後、回数が少なくなったとしても、馴染んだ体の感覚は一生物、一生の財産です。例え、いつかヨットを手放したとしても、その一旦馴染んだ感覚を失う事は無い。そして、いつか、また乗れるようになると、すぐに体が昔の感覚を思い出して、すぐに走りまわれるようになるでしょう。

ですから、どこかの時点で、集中して、できるだけ回数多く乗られる事をお奨めいたします。将来、日本一周するにしても、世界を回るにしても、まずは、デイセーリングで、回数多く乗って、体で感じながら、馴染ませて、本当に自分のヨットにしておく事が全ての可能性を高めると思います。ここでもデイセーリングは基本になります。大事な事かと思います。

そして、その基本的デイセーリングさえも、そのまま一生デイセーリングだとしても、深く知る事によって、もっともっと楽しむ事ができるようになる。高い質のセーリングができるようになる。デイセーリングは基本であり、また、深いものでもあると思います。ですから、一生をかけてデイセーリングを楽しむ事もできれば、ここから出発して、旅に出ていく事もできる。全ての入り口であり、ひとつのセーリングのジャンルでもあると思います。

次へ          目次へ