第三十三話 デイセーラーの原型

アメリカのデイセーラー熱は今に始った事では無いようです。以前はそういうジャンルとして確立されておらず、プロダクション艇としては存在していなかったので、カスタム建造、木造艇として建造されていたようです。木造と言いましても、技術の発達により、昔のようなメインテナンスは不要で、表面にFRPを張ってメインテナンスとしてはFRP艇と変わらない。

 写真のヨットは31フィート、34,35です。いず
 れも木造艇のデイセーラー。この辺りに現在の
 デイセーラーの原型があるようです。

 一部の愛好家がカスタムで建造していたヨット
 それをFRP素材に変え、プロダクション化して
 きました。大きく異なるのは水面下の船型です
 今のデイセーラーは帆走性能が高い。





プロダクション化する事はある程度の需要を
見込まないとできません。最初は冒険でもあっ
たと思いますが、その可能性を見たのでしょう、
プロダクション化によって、デイセーラーは大き
く成長し、ひとつのジャンルを形成しています。
 





 デイセーラーはこれらの木造艇によって確立
 していたのかもしれません。ただ、極めてマイ
 ナーな存在だったのが、プロダクション化によ
 ってその存在がもっと広がるようになってきた。
 一種のマニアックな人達が、愛好家が楽しんで
 きたのが、FRP化によって一般の方々へも浸
 透してきた。それは美しいデザインと取り扱いのし易さ、そこから来るセーリングの面白さを彼らだけが楽しんでいたのを見て、思いついたのか
もしれません。ヨットは何も旅である必要性は無い。自転車やバイクのように、気軽に風を切る楽しさがここにはあります。

旅はどちらかと言うとヘビーなものです。事前準備が重要です。でも、これらには気軽さと一、二泊ぐらいの手馴れた場所への気軽な旅、ヨットを遊ぶに、これで充分と考えた。デイセーラーとしては小さければそう呼ぶ事ができるかもしれないが、圧倒的な美しさと存在感という意味では充分ではなかった。それがカスタムで建造するきっかけかもしれません。それを横目で見ながらも、一般的には木造艇を造るのはかなり気持ちがヘビーです。それがFRPになって、プロダクション化された事で入り易い状況になっていった。

デイセーラーは美しさと気軽さが勝負です。旅も確かにヨットの醍醐味のひとつ。でも、気軽なデイセーリングも、それに劣らず、ヨットの醍醐味が備わっています。もっと気軽に遊んではいかがでしょう。

現代のデザインは極めて効率的です。一部の無駄も無いようにスペースを有効利用しています。それはそれで狭い空間ですから良い事なのですが、その代償として、美しさを逃しているような気もします。スペースを無駄無く使う事は重要かもしれませんが、遊びとしてのヨットとしては、有益性は劣るかもしれませんが、その代わり美しさを手に入れるという事も、遊び故に大事な事かと思います。楽しさというのはそういう所からも生まれるのではないかと思います。有益、有効、効率、そういうのが楽しいとは限らない。美しいヨットを縦横無尽に乗り回す。そんな光景に一種の羨望を感じます。遊びは理屈では無い。そういう事になろうかと思いますね。元々ヨットは無駄な物、その無駄を承知で、ヨットをいかに有効に使うかという考え方もありますが、無駄を承知で、無駄を無駄のままにしておく遊び心にも感心してしまいます。何でもかんでも人間の使い勝手の良いようにしてしまうのでは無く、美しさとか遊び心を優先してしまうところに寛容さを感じますね。

次へ       目次へ