第六十八話 三極化 

昨今の欧米ヨットを眺めていますと、ジャンル分けがますます進んでいるのではないかという気がします。ひとつはいつも言ってますデイセーラーの台頭です。ますます、いろんな造船所がいろんなサイズをデイセーラーコンセプトとして出してきています。二つ目はキャビンヨットです。欧米の大量生産造船所から排出されるこれらのヨットは、ますます競争が激化してきており、一部ではこのジャンルから抜け出そうとしています。そしてみっつ目が外洋艇です。サイズはますます大きくなり、
このジャンルでは、大量生産艇が中心とするミドルクラスのサイズが無くなってきました。これらに加えて、本当はレースのジャンルとスーパーヨットクラスがあります。

全てのジャンルは時が経つにつれ、その様相を濃くするものです。デイセーラーはそのコンセプトにおいて、もっともっと改良が成されて行くでしょうし、キャビンヨットや外洋艇においてもしかりです。それらは、ヨット人口が多いが故に可能でありますし、日本は海外のこういう事情を眺めながら、彼らの開発していくヨットを冷静に見て、自分のスタイルを確立していく事が必要かと思います。

考えて見れば、気楽なもので、いろんなジャンルから選べば良いわけです。欧米の大衆はキャビンヨットが中心になりますので、どうしても価格面を取り上げれば、日本もそういうヨットにならざるを得ないかもしれません。これは欧米でも同じで、その中から、デイセーラーに移行する人達が出てきて、また、外洋艇に行く人達も居るわけです。そういう意味では大量生産艇は、市場拡大に一役買っているわけですから、こういうヨットがもっともっと増えて行ってほしいとも思います。そして、次にステップアップして行っていただければと思います。

英国のヨット雑誌、ヨッティングワールドの7月号にデイセーラーの記事が掲載され、イタリアのB30とB38が取り上げられています。他にも世界中でデイセーラーの台頭が見られます。これは車社会におけるスポーツカーと同じだろうと思います。車が社会に浸透しますと、遊びとしての車がほしくなる。それはこれまでの室内空間の広さや乗り心地優先というより、スピードとドライブ感を楽しもうという遊びです。それがヨットの社会にも出てきた。だいたい、ヨットなんていうものは、最初から遊びなんですから、それで良いわけです。欧米の歴史を考えると遅いぐらいです。以前はそれをレーサーに求めたのかもしれません。しかし、ますます拡大化するレーサーの世界、複雑化する世界、次々に出てくる新しいモデル。個人で対応するにはしんどくなります。

しかし、レースの世界を飛び出てみますと、セーリングを楽しむのに、レーサーである必要性も無いわけです。イタリアのB30とB38はかなりのハイパフォーマンスデイセーラーです。レーティングにも無関係、それでいてシングルで楽々と高性能のドライブ感を味わう事ができます。

外洋艇はと言いますと、このジャンルは昔からあるわけで、大航海を経験してきた分けですから当然ですが、デザインはいろいろありますが、その中で外洋艇といえども、帆走性能を高めるとか、サイズがどんどん大きくなるとかが出て来るわけです。あの、スワンですが今や最大は131フィートを建造してますし、最近オイスター社は100フィートから125フィートのヨット建造に乗り出す事を発表しました。70〜80フィートのヨットなら、既にたくさんあります。

恐らく、今後、外洋艇は最低50フィート前後から、それ以上になっていくのではないかと思います。
それ以下ぐらいにキャビンヨットが来て、デイセーラーはそれとダブル事になりますが、まあ、だいたい25フィート前後から40フィートぐらいが主流で、それ以上のサイズもありますが、それらを含めて、いかにシングルかショートハンドで楽に、高い帆走性能を味わえるかがキーポイントですから、特にサイズの大きい方は電動、油圧、ハイテクなんかを駆使して、他のヨットでは苦労しながら走るところを、シングルで実に楽にセーリングを楽しむ方向に進むと思います。逆に、小さい方はそういう物に頼らずに、自分の手で動かすところに面白さを感じたりするわけです。

キャビンヨットではキャビンの広さと、充実装備、それに価格の安さが大きな魅力となるでしょう。エアコンなんか当たり前にきっとなるはずです。家庭にある物が全部揃うようにきっとなるでしょう。

こうやって、それぞれのジャンルが先へ先へと進み、自分のスタイルさえ見失う事が無ければ、これから先、ヨットはますます面白くなると思います。

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