第一話 知識で遊ぶ

例えば船型などの知識は参考にはなります。しかし、船型をどうこうする事はできません。せいぜい磨いてピカピカにするぐらいです。でも、デッキから上は知識があると、いろいろ変えて遊ぶ事ができます。それは面倒なだけでしょうか?もちろん、レーサーみたいに考える必要はありませんし、知識が増えると遊ぶバリエーションも増える程度に考えても良いのではないでしょうか。

中には電信柱みたいに太いマストがあります。まあ、外洋に出るならそれも良いかもしれません。ただ、日常でのデイセーリングを考えますと、ちょっと面白さが減じられるよう気もします。マストは知識があればチューニングを変える事ができます。それによって走らせ方も変える事ができます。それも遊びとしても面白いのではと思う次第です。

さて、マストですが、マストは曲げて遊ぶ。曲げるのはセールのドラフトの深さを変える為という事は誰でもご存知です。それならもうちょっと突っ込んで考えて、マストのチューニングを考えてみてはいかがでしょうか?ご存知の通り、メインセールのラフはカーブを描いてますので、このカーブと同じカーブのマストの曲がり方をしますとセールはフラットになります。つまり、マストを曲げるのはドラフトを浅くする為、強風対応です。逆に、曲がりを少なくするとドラフトが深くなります。ドラフトが深いのは微軽風対応です。こういう事はレーサーもクルージングも関係なく、その時の風に対応できた方がより快適になりますから、クルージング派もデイセーリングの時はこうやって遊ぶと幅が広がると思います。

最近のヨットはチェーンプレートがマストの真横では無く、少し後ろにチェーンプレートが位置しているのが多いです。いわゆるスプレッダーが後部スウィングしています。このヨットのサイドステーの最も高いアッパーを締め付けますと、マストは下側のやや後部側から引っ張られます。それにスプレッダーがついてますから、マストの中間部は前側に行こうとします。腹が前側に出てきてマストはカーブを描きます。と言いましてもこのステーは下側の力が大きいですから、それほどのカーブにはなりません。マストを支える役目です。マストを曲げるのはバックステーアジャスターですね。前側はフォアステーがありますから、このアッパーとフォアステーの位置はバックステーを引いても変わらない。(フォアステーのテンションが一定として) このフォアステーから上側がバックステーによって後ろに引かれますからマストは曲がる。同時に、このポイントから下側は前側に曲がります。腹が前側に出てきます。そこで、その下のミディアムのステーがありますが、このテンションで腹が出る限度を決める事になります。バックステーを引く、そしてミディアムにテンション一杯かかった時
腹はそれ以上前には出無くなる。つまり、これで曲がる限度を決める事ができます。

というわけで、ミディアムはセーリングしていない時、緩いはずです。バックステーを緩めると、マスト上部の曲がりは減少し、それにつれてマストの腹も出ていたのが引っ込んでくる。ミディアムのワイヤーは緩みます。ですから、何でもかんでも締め付ければ良いわけでは無く、ミディアムはある程度緩めで良い事になります。どの程度緩めかは、実際のセーリングをしてからの決定になりますが、バックステーを引いて、トップから下まできれいにフラットになっていくなら良いと思います。ロワーはアッパーと同じぐらい締めておいて良いと思います。

想像してみてください。バックステーを引きながら、どんどんセールがフラットになっていく様を、それで、いろんな風でセーリングする様を、どの程度の風ならどの程度バックステーを引いていったら良いか、乗れば乗るほど解ってきます。この調整を面倒と考えるか、やってみるかと考えるかで、その後の遊び方も変化してくると思います。この変化をつけないと、強風でギヤシフトはローかセカンドに入れて走っているようなもので、無理してますから、風を逃がすかしないとしんどいです
ね。でも、ちょっとバックステーを引いてトップギヤーに入れてやると、もっと楽にに走れる。クルージング派の方もセーリング中はこんな事やって遊んでみるのはどうでしょう。

知識を得て、解ってセーリングするのと、解らずにセーリングするのとでは、同じセーリングでも質が違ってきます。どうせ遊ぶなら、質の高いセーリングの方が面白いと思いますが。
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