第二十六話 面白いセーリング

どんなセーリングをするか、そこが分かれ目です。面白いセーリングとは何か。仕事がらいろいろなオーナーとご一緒する事があります。オーナーの仲間と一緒にセーリングして、ワイワイガヤガヤ、ビール飲んで、おしゃべりして、楽しい1日を過ごす。その同じオーナーと二人で乗った時、以前よりもセールに気を使い、舵に気を使い、たまたまですが良い風が吹いてきて快走を味わった事があります。こうなりますと誰でも面白いものです。もっとこういう感覚を味わいたいと思います。
今までは、セールを一旦出してしまえば、後はそんなに扱う事は無かった。たまにちょいとシート
を引いたり、タックした時に動かすぐらいです。後は、船上での宴会です。

風が強くなってきたら、ジェノアを巻く。ひょっとすると、うまく走れば、快走が楽しめるかもしれない場面です。それが一旦、快走を体験する事によって、もっとセーリングをしたいと考えられました。
古い伸びきったセールを変えて、新しくする。それによって、セール調整ができます。おまけに、ジェネカーを採用して、ダウンウィンドも何とかしようという意気込みです。それまでは、ただ退屈なダウンウィンドでしたが、これも何とかしようとされる。

これが面白いセーリングだと思います。舵を握って、シートを出したり引いたりした瞬間の感覚を得る。バランスを取りながら、そのバランスを楽しみながら走る。そういう事が面白いセーリングだと思います。舵を持つ手にかかる抵抗が重かったり、或いは、スーッと軽くなったり、いろんな事で、いろんな感覚がそこにあります。でも、これはそれを味わおうと思わない限り、見過ごしてしまうものでもあります。でも、そこに、一旦、その気が出てきますと、誰でも味わう事ができて、そして誰でもそれを発展させる事ができます。それが面白いセーリングではないかと思います。

これらは野球で言うならヒットを打っているようなものです。ヒットを数多く打つ為に、いろんな事を工夫して走る。ヒットを打つ為には集中して走る。面白いセーリングです。それで、故意か偶然か、良い風が吹いてきて、セールもピタッと合って、快走する事があります。これはホームラン。故意でも偶然でも良いのですが、とりあえずホームランを体験する。そうしますと、もっとホームランを打ちたくなります。その為には、集中してヒットをできるだけ多く、自分の考えの基、打ち続ける事を心がけます。その努力は心地良い努力で、努力というより、ワクワクして遊んでいるだけ、ただ集中はしている。これは面白いセーリングだろうと思います。その為に学ぶ事も面白くなりますし、メインテナンスさえも面白くなります。

なにはともあれ、まずは、セーリングに集中して帆走するという意識を持たれたら良いと思います。
技術なんてのは後からついてくるものです。どんなに技術があっても、集中しなければ面白さは解らない。集中する事、その場面だけでもです。それが面白い感覚を味わう方法だろうと思います。
それを味わったら、もっと味わいたいと思うようになるでしょう。そうしたら、どうしたら良いか、技術を学び、メインテナンスをし、ヨットの事を学び、自分に合うヨットはどんなヨットかと考えるでしょう。
それら全部が面白くなってきます。これで、ヨットは本当に自分の物になりました。

余談ですが、ビリヤードをされた方は多いと思います。あのビリヤード、偶然に意図しないボールが意図しないポケットに入る事が時々あります。偶然だろうとボールが入ると、もう一度今度は意図して入れてやろうと思います。それで、余計に神経が集中し、うまく行く時もあります。神経が集中している時、確立は高く、それが鈍い時、大抵は入らない。人間の集中とは不思議なものです。
では、技術もさる事ながら、いかに自然に集中できるかも大きな要素ですね。とりあえず、今はシングルハンドになると、誰でも集中できると思います。

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