第八十八話 こだわり過ぎ?

長い事、ひとつの題材について文章を考えてますと、どうしても細部にわたっていきます。そうするとこだわり過ぎじゃないか、と言われる事があります。確かに、何もそこまで考えなくてもとも思います。もっともっと気楽にヨットの世界に入ってきてほしい。それはそうです。楽しそうだ、爽やかだ、ステータスだ、優雅だ、何でも良いんですが、何かのきっかかり、何でも良いんですが、そういうチャンスがあったら是非、ヨットの世界を味見して頂きたいと思います。そういう意味では、複雑な戯言は面倒臭さを感じさせてしまうかもしれませんね。最初はもっとシンプルに、ただカッコイイだけでも乗る理由には充分です。

さて、文章を長く書き続けるには、それなりの何かが必要になり、複雑になり、深くなり、それはこだわり過ぎになります。しかし、ヨットも永く続けるには、最初の動機だったカッコイイだけでは収まらなくなってしまいます。10年、20年、30年続けるには、それなりの深さがないとやってられません。それが表面的な物だけになりますと、月に1回でも乗れれば良い方かもしれません。でも、自分なりのどこかにこだわりますと、そこを突っ込んで行きますと、何度でも乗れるようになると思います。多くの方々がもっともっとヨットに親しみ、もっとヨットとつきあって頂きたいので、何とか、その理由を考えているようなものです。

間口は広く、そして、中に入っていけば深く、その間口の広さは誰でもやる事ができて、その深さは長く続けられる動機になる。勝ち負けのゲームは動機になりやすい。スコアのゲームは得点が動機になります。でも、ヨットばかりは、レースでは無い限り動機付けが難しい。へたすると、漫然とセーリングして、終わるかもしれない。それだけに、自覚が無いといつの間にか遠ざかってしまう事もある。欧米人のように、時を過ごす場としてのヨットの使い方が上手であるなら、それも多いに結構なんですが、どうも日本人には合わない。そうしますと、やはりどこかにこだわりをもって、テーマを持って、そこに突っ込んでいかないと何十年は続かない。

ヨットが既に日本社会に馴染んでいるならば、ちょっとチャーターでもして、仲間と遊んでくるという軽いノリでも良い。チャーターすればいつでも乗れるなら良い。年に1回でも面白いという事にんはなるでしょう。でも、日本はそこまではいってない。日本社会にヨットが馴染むには、間口は大きく、そして入ってきた方々が、長く、しかも楽しんで頂かなければ、馴染む事は無い。

間口が大きくというのは、小さなヨットでもOKですよ、遠くに行かなくても面白いですよ、時間が無い人でも半日でもOKですよ。難しい事無いですよ。そういう事だと思います。そして、既に入って来た方々には、長く続ける動機を持っていただかなければなりません。それは面白さです。どれだけ面白いのかです。そこに深さも必要です。快楽的楽しさは一時的であり、深さは無い。でも、新しい発見や学び、体験には面白さがある。ですから、その面白さを体験して、自分なりのセーリングを追及していってもらいたいと思ってます。

ピクニックセーリングも宴会もみんながやってきた事ですが、それもどうも盛り上がりにかけている。楽しいんだけれど、追求するような事では無い。クルージングというのは本来、何週間にも渡るロングを指しているんだろうと思います。そういう乗り方には発見もあるでしょう。いろんな目にも遭う。でも、唯一の欠点は時間が無い事です。じゃあどうするか、その答えがデイセーリングでのセーリングの探求に行き着くわけです。誰でもできる、今居る自分のレベルでできる。そしてセーリングに専心すれば深さも知るし、発見もあり、学びもあり、エキサイティングなシーンもあり、不安もあり、何でもある。デイセーリングにはセーリングの殆どがある。豪快な大海を渡るというのはありませんが、気軽にすぐできる気楽さがあり、その気になれば何回でも出れる。感覚さえ鋭くなれば、これは誰でも集中すれば、いろんな事を感じられる。まさに、全てが凝縮してここにある。これを第一にお奨めしています。間口は広いです。誰でも出来ることなのです。

それで、次に、もっと専心するなら、シングルハンドをお奨めします。理由は散々書いてきました。
仲間との集いやファミリーセーリング、宴会やピクニック、そういう事も合間でできる。ゲストに何かを追求せよというのは無理な話、でも、オーナーには、日常の使い方としてはデイセーリングでセーリングそのものを追求していただきたい。自分なりで良いんですから。ただ、セール出して走ってる、デッキの上ではおしゃべりか、ビールでも飲んでる、それでづっと続くし、しょっちゅう暇さえあれば乗ってるというならOKですが、そうでなければ、もうひとつ何かがほしいと思われるなら、是非、デイセーリングにおける自分のセーリングスタイルを造ってほしいと思います。

要は、やり方は自由で良いんですが、多くの方々が自分なりで、楽しみ、多いにヨットとつきあって頂きたい。それを見て、もっと多くの方々がヨットを始めようかなと思う動機にもなる。それさえあれば使い方なんてどうでも良いんです。多くの方々が面白さを感じていただければ、それで良い。
ヨットを自由自在に操る人が居て、それを見て、カッコイイなと感じ、自分もそうなりたいと思う。それが必要だと思います。それも大きな事をするんでは無く、目の前の海域でする人達が良い。
その牽引車はセーリングを堪能する人達ではないかと思います。そういう人達が全国に広がっていけば良いと思います。しかも一部のいかにもマニアに見える人では無く、ごく普通のヨットマンの姿として、ただセーリングが面白いからやってるという人達が増えてほしいですね。彼らは、もちろんセーリングを堪能しますが、宴会もするし、ピクニックもする。そういう意味ではこだわりは無い。ただ、自分が遊ぶ時は、日常的にはセーリングを堪能している。セーリングしかいけません何てことは言いません。何でもOKなんです。ただ、日常はセーリングです。うまくなろうと思う気持ちがもっとも強い動機になる。そうでなければ、ただの遊園地になってしまう。遊園地に毎日行ってもしょうがない。

楽器でも、ゴルフも何でもそうですが、やればうまい人はカッコイイですよね。ですから自分も上手くなりたいと思います。カッコよくなりたいと思う。ヨットにもそれが必要なんです。ですから、クルージング派もセーリングにこだわっていただきたいと思います。

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