第八話 ビッグバンド&ソロ

音楽にはクラシックならオーケストラがあり、少人数の室内楽がる。同じようにジャズの世界ではビッグバンドで、カルテット(4人)、トリオ(3人)、ソロというのもある。大人数では大迫力の演奏が聴かれますし、少人数では彼らの高等技術と言いますか、緊張感あふれる演奏が聴かれます。どちらが上でも下でも無く、それぞれに良いところがある。後は、好みの問題でしょう。

ヨットにおいても何ら変わる事がない、同じなんだなと思います。ビッグボートで大勢のクルーで乗るヨットは大迫力だろうし、各クルーの息がピッタリ合えば、ヨットは美しい動きを見せてくれる。一方少人数では、技術の高さが出ますが、誰に見せるわけでも無いので、自分で楽しみ、うまくなればその技術は全般にわたり、レベルも高くなる。

ただ、大人数ともなりますと、バンドのように目的が明確ならばチームとして同じ方向を向きますので、良いチームワークを取り易いですが、ヨットの場合、レースという明確な目標でないと、なかなか難しいのが現実です。それで、少人数の方がよりやり易いし、ソロならもっとやり易い。ヨットの場合はソロでも、風と波がありますので、トリオみたいなもんかもしれませんね。

ソロでもトリオでも、カルテットでも、同じ目標に向かって、何かをしようとする時は実に面白いセーリングができます。キャビンは休憩の場です。ジャズにテイクファイブという曲がありますが、あれは5分休憩という意味です。余談ですが。セーリングして、はい、5分休憩とキャビンでやすむ。

市民バンドでも、余暇としてやる人達は一生懸命練習しますね。彼らは、楽したいわけじゃない。しっかり汗かいて練習したいんです。うまくなりたいんです。その方が面白いからです。ヨットも本当は同じで、楽しに行こうと思うと、実は面白くなくなるんです。練習してうまくなろうと思うと、汗かく事になりますが、面白くなります。そこを履き違えている。そしてキャビンはその合間の休憩です。そういう使い方の方が日本人には合うと思いますし、その方が絶対面白いです。

ボーリングだって、野球だって、サッカーだって、うまくなればなる程面白くなる。楽器演奏もそうだし、絵画も陶芸も、何でもやるからにはうまい方が面白くなる。当たり前の話です。ところが、ヨットだけは別で、そこそこなら、後は宴会で良いとなる。ヨット衰退は宴会に始まると言っていいかもしれませんね。

練習と言っても学生さんのクラブ活動のような物では無く、楽しみながら、自分のペースでやれば良い。少しづつうまくなるように練習していけばいい。練習そのものが、遊びでもある。何も筋トレしなさいとかいう話じゃないんですから。遊びながらの練習なんですから、これ程面白いもんは無いんです。その合間に テイクファイブ です。

これが日常にちょっとした冒険と感動をもたらす事になる。スポーツでも音楽でも一緒です。行為は違いますが、到達するところはみんな同じだろうと思います。それで他のスポーツや音楽などは盛んなのに。何故ヨットはそうではないか?ヨットも他の行為と少しも変わらない。ヨットで宴会して楽しいとは思いますが、それ以上ワクワクするような面白さは出てこない。ここが問題です。

是非、練習して遊んで、うまくなってやろうと思っていただきたいです。そしてたまに誰か乗せてやった時はスイスイ、セーリングできます。これ、とってもカッコイイと思うんですが?いかがでしょう?
海外のでかいキャビンのヨットは外洋に行くから必要なヨットと、そこに住むか別荘にするからでかいのと二通りだと思います。日本では住む人は居ないので、別荘代わりと思われるんなら、それはそれで私がどうこうは言えませんが、そういう方々にもセーリングした方が面白いですよとは言いたいですね。だって、陸上の別荘地見れば一目瞭然、いつも閑散としてます。それじゃ面白く無いんです。その時は楽しいかもしれないですが、面白くはないんです。楽しい事は毎日すれば、だんだん飽きてくる。でも、面白い事は毎日しても、もっとやりたくなる。

ビッグバンドでもソロでも構いませんが、うまくなりたい、そして良いセーリングしたいと思う事が面白いになる。面白いという感覚は、頭脳を活性化させ、肉体も若く保つ秘訣ですね。ちょいワルのモテモテオヤジには絶対必要な要素です。騙されたと思って、1シーズンか2シーズンうまくなろうと練習して遊んでください。きっと、面白くなります。宴会は2の次でも良いと思うようになります。
何故か、みなさんクルージングというと、のんびりが合言葉ですね。あれはピクニックに行くようなものです。ピクニックはそれで楽しいのですが、実際、しょっちゅうピクニックに行ったりしますか?
行くとしても天気の良い日に秋と春ぐらいにちょいと行くぐらいでしょう。今やヨットはピクニックヨットになってる。

楽団は楽器もちよって宴会してません。練習してます。宴会するとしたら、練習後です。草野球だって何だって、本来の物を練習してます。宴会はその後です。それが、もし宴会が主役になったら、多分、人は集まらなくなると思いますよ。本来の事を集中して楽しんだからこそ、その後のビールがうまい。ゴルフの後のビールが楽しみという人も、ゴルフやる時は集中してます。適当にやったゴルフの後では味も違うでしょう。面白さというのは集中と弛緩の繰り返しにあるのかもしれません。

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