第五十八話 メインテナンスの認識

中古ヨット市場ですが、仕事柄、海外の中古ヨットなんかも気にしておりますが、全体的に言いまして、欧米市場の中古は日本の市場よりも2,3割は高い金額で売買されています。同じ年式、同じモデルで、そのぐらいの価格差があります。でも、違うのはそれだけではありません。欧米艇はメインテナンスが日本に比べてかなり良い状態にあります。

数年前、アメリカから20年オーバーの中古ヨットが来ましたが、そのきれいな事、こうなったら船齢なんて関係ないなと思える程でした。アメリカでは資産として、手入れが良ければそれだけ高く売れる。それだけでは無いと思いますが、みなさんきれににしてます。

日本ではヨットはメインテナンス次第で大きく違ってくるとは、みなさんご存知ですが、実際にそれを実行されている方は少ない。どこか不具合がでるまでそのまま、というケースが多いようです。不具合が出る前に、出無いようにする。そういう事でトータルのメインテナンス費用を大きくならないようにする。あるニュージーランド人はそう言ってました。保険のようなもんだと言ってました。おまけにそうする事によって、ヨットの事に詳しくなるし、トラブルも少ない。気持ちよく乗れる。そういう事に対する労力を惜しまないようですね。楽しみながらやってるような気もします。

でも、日本でも30年オーバーのヨットも出てきました。そうしますと事情は少しづつ変化してきます。30年経ったヨットでも、まだまだ乗れるという事が解ってきます。後は状態次第です。この事は、
中古価格やメインテナンスに対する認識への影響になると思います。同じモデル、同じ年式でもメインテナンスが良い方が高く売れるのは当たり前のはずです。

日頃のメインテナンスは当然ですが、まずはどこもクリーンにしておく事、そうすれば、何かの変化にすぐに気がつきます。エンジンルームなんか、1滴のオイルでも落ちれば、すぐにわかるようにする。これは掃除だけです。サビなどが出無いように気をつける。特別な知識が無くともできる事です。そして、できれば、10年ぐらいたったら、トータル的に見直すぐらいが良いと思いますね。

車はほっといてもそうは壊れません。しかし、舗装道路を走る車とは全く環境は違います。それも、車より寿命は長い。それに何かあれば全部自己責任ですから、簡単に道路脇に止めて、JAFを呼ぶというわけにもいきません。日本全体がメインテナンスをよくするようになると、中古価格も上がるのではないかと思います。

良い状態が基本になりますと、サベイヤーが来て、こことここを修理しなければならない、と出たら、その分を値引きしてほしいという交渉も成り立つ。新艇はシェイクダウンして完璧に近づき、メインテナンスでそれを維持していく。車を洗わない人も、ヨットだけは洗ってほしいものです。

次へ       目次へ