第五十一話 イタリアン

フェラーリを造りだす国です。バイクも自転車も楽器でも超一流というのがあります。あのバイオリンのストラディバリもイタリア人、あのミケランジェロもラファエロもレオナルドダビンチもイタリア人。
どうも、イタリア人の美的感覚と、職人の腕は異なるようです。特に芸術や遊び物には良い物を出す。横浜に進水したコメット33も、ちょっとした違いなんでしょうが、イタリア人に言わせるとトラディショナルと言いますが、やはりちょっと違うデザインです。それに、パルピットの溶接部分なんか、溶接の後さえ解らない。きれいな仕上げをしています。

前にも書きましたが、チークデッキに縦のストライプ(黒い目地)は良いが、それを横ぎる、木と木を
縦に繋ぐ部分は美しくない。それで、SPというもので目地を入れずに繋ぐ工法をしていました。それで、デッキには縦の黒い目地のストライプを横切る線は一切無いわけです。確かに、この方が美しい。でも、問題は一部このSPによる繋ぎが完全ではなかった。ネジの締め付けが甘かったり、そういうちょっとした事に手抜きでは無いんでしょうが、甘さがあった。良い物を造りだす職人の腕は相当レベルが高いと思います。でも、ちょこちょことマイナーなトラブルが出る。でも、造りはなかなか良い。それで、シェイクダウンして、トラブルを出し尽くしてしまうのが良い。そうしますと、イタリアンの面白いヨットで遊べます。車もバイクもみんな楽しめる。それが高性能イタリアンの付き合い方かもしれません。

イタリア人達は陽気で、人生を楽しむ為に生きてるという感じがします。いい加減なところもある。でも、職人さんの誇りは高く、腕も良い。それに大都会に集中していない。ある聞いた話、有名な自転車工房が、山の中のド田舎にある。それを見学に行った日本人、フレーム製作の溶接の腕の良さにはびっくりだったとか。多分、職人が造るイタリア製には良い物があって、大量生産には向かないのかもしれませんね。イタリアのコマー社も大量生産はしないと言ってました。多分、その事が解っているのかもしれません。大量生産になると、職人の入る余地が少なくなります。それではイタリアらしさは出無いのかもしれません。溶接にしても、つなぎ目がわからないくらいに磨き上げると、大量生産向きでは無いし、美しさを損なう。面白いもんです。これは機能性的には全く変わらないんですが。

どことなくイタリア人は傲慢さは無く、気さくで陽気で、ちょっと良い加減さは頭に来る事もありますが、イタリア料理はうまいし、気取ってなくて、ヨットもコンセプトが明確で、美しいし、最初はトラブルで頭に来る事もありますが、ちゃんとシェイクダウンしてやれば、実に良いヨットだと思います。それにちゃんとこだわりがある。経済だけを優先していない。

ですから、イタリア人の生み出す良いヨットを、これからも日本に入れていきたいと思います。最初の年をシェイクダウンの年と思って、きっちり整備していけば、美しいし、良く走ってくれるし、なかなか面白いと思います。シェイクダウンが必要なのはイタリアヨットだけでは無く、全てのヨットがそうですから、同じ事ではあります。走る乗り物が好きなイタリア人、速いのが好きなイタリア人、美しい物が好きなイタリア人、人生を楽しむイタリア人、ちょっといい加減なイタリア人、親しみやすいイタリア人、なかなか面白い。

ちなみに、コメットヨットですが、船体に使う樹脂はビニルエステル、ステンレスは全て316、溶接技術も素晴らしい。バキュームバッグ工法で、構造的にも良く造られてます。それに、帆走するのがヨットという考え方も賛成です。

次へ       目次へ