第三十九話 セーリングする人しない人

セーリングをどのように考えるか、そこが分かれ目ではないかと思いますが、面白いセーリング、エキサイティングなセーリング、そういう体験をしたい人はセーリングが中心になりますから、できるだけセーリング艤装以外の装備はシンプルにした方が、セーリングがし易くなります。反対にキャビン重視の方々は、セーリング艤装はシンプルにして、キャビン内の装備を充実させた方が良いという事になります。このふたつを両立させようとする方が結構多いのですが、なかなか両立はせず、結局どちらかに片寄る事になり、殆どはセーリングをしない方になるケースが多いようです。充実した装備やキャビンの大きさが気持ちをヘビーにさせてしまうようです。

今、ヨットを所有されている方々で、今まで、どのように使ってきたかを充分検討して頂きたいと思います。冷蔵庫や温水シャワー、ギャレーなどをどれだけ使ってきたか、キャビンをどれだけ使ってきたか、そしてそれらが無くなった時、或いはシンプルになった時、困るだろうか、と考えて頂きたい。充分有効に使われてきた方々は必要な道具でしょう、しかし、殆ど使ってこなかったという方々も少なく無いのではないかと思います。もし、そうなら、もっと装備をシンプルにする事によって、どれだけ気楽にセーリングを堪能できるかを想像して頂きたいと思います。

冷蔵庫が無い事がそんなに困るでしょうか? 温水シャワーが無い事がそんなに困るでしょうか?
キャビンが狭いとそんなに困るでしょうか? それらと引き換えに快適な、面白いセーリングが堪能できるとしたら、いかがでしょか?

本当に堪能したいと考えるならば、割り切る事が大切です。それは、セーリングを充実させるか、居住性を充実させるかです。その割り切りをきっちり持たないと、ヨットを堪能する事はできません。中途半端になってしまいます。そして、結論を言うならば、日本人の多くの方々にとっては、セーリングを充実した方が絶対面白いという事です。

ある方のお話ですが、これまでにたくさんの人達、ヨット初体験という人達を乗せてきたそうです。そして面白い事実があります。ゆったりクルージングして、世間話して、飲み物をふるまってというセーリングをした場合と、波は被るは、大きくヒールしてスリルを味わうは、どんどん走るセーリングをした場合ですが、前者はまた乗せてくださいと言うものの、二度と来ない。それに比べて、後者は
本当に来る割合が非常に高いそうです。つまり、優雅なセーリングは最初の1時間もあれば充分、やっぱりヨットのヨットたる所以であるセーリングが面白いかどうかです。ある人は、前者的な乗り方をされた、そしてその方から聞かれた事があります。ヨットのどこが面白いんでしょう?ちっとも面白いとは思わなかったそうです。

つまり、キャビンライフでは日本人は物足らない。本当はみんなエキサイティングなセーリングがしたいんだと思います。それなのに、そうする方は少ない。ヨットで社交性を発揮するより、もっと感じたいんだと思います。コンピューターの中のゲームでは無く、映画でも無く、自分の体で体感したいんだと思います。そういう事が少ないからです。特に、現代はそうです。クルーが居ないと言われますが、クルーになっても面白く無いからだと思います。面白い事なら人は集まるでしょう。でも、どんなにキャビンが充実しようが、エアコンはいっていようが、ご馳走が出ようが、面白く無いなら、誰も来ない。今まで味わった事の無い、エキサイティングな体験などをすれば、面白く感じたなら、また乗りたいと思うはずです。

キャビンが全く不要だとは言いませんが、ヨットのキャビンが魅力なのでは無く、セーリングが魅力なのです。そんな事ができるのはヨット以外には無いからです。ヨットだからこそできる事です。キャビンは陸上の延長です。セーリングは陸上とは離れています。それだからこそ良いんじゃないでしょうか?仕事が忙しい方、ヨットでのんびりしてストレス解消したいという方もおられます。気持ちは解ります。でも、積極的にストレスを解消するには、のんびり寝ているより、夢中になってセーリングに集中する方が、遥かにストレス解消になると思います。

次へ      目次へ