第三十四話 遊び文化

あるオーナーから記事をご紹介頂きました。その記事によりますと、南太平洋で土器が発掘され、
その土器は日本で作られた縄文土器である事がわかったそうです。優れた航海術を持つ、海洋民族であったという事だそうです。日本人にはそういう血が流れている。ですから、海が好き、なんて言う人は多いのかもしれませんね。でも、ヨットが今一使いきれないのは、これいかに?

ヨットは17世紀にオランダで作られ、英国のチャールズ二世にも送られた。全長16mの豪華なヨットだったそうです。その後、もう一艇、オランダはもっと帆走性能の良いヨット、長さ10.4mを英国に送ったそうです。英国人達はいたく感激し、その後、ヨットの普及を始める。とは言っても、英国貴族の遊び用のヨット、その後、ブルジョア階級に広がり、庶民にも広がっていく。
豪華なキャビンヨットは社交の場、一方帆走性能を高めたヨットはスポーツ用、レース用だったそうです。

日本は海に囲まれていますので、海洋民族にはなるべくしてなったと思われます。それが、縄文土器の発掘で証明されるどころか、世界の中でも極めて早く、外洋を航海していた事がわかりました。ですから、日本人と海は切っても切れないものがあります。現在でも、漁師は世界を渡っています。そういう血が流れています。それで、ヨットはと言いますと、問題は血の問題では無く、遊びという文化にあるような気がします。日本人は仕事であれば、世界の海に出かけて行きます。しかし、それが遊びとなると、そうは行かない。これは遊び文化の縛りではないか?

この縛りさえ消えて無くなれば、日本人は世界に誇るヨット文化を享受できるのではないかと思います。経済至上主義、効率至上主義、そういう物からはヨット文化は生まれない。資本主義の権化であるアメリカで、あれだけヨット文化が盛んなのですから、日本人もその要素は持っているわけですから、ちょっと考え方を変えただけで、世界はぱっと変わってしまう。

戦争で全てを無くし、その後の高度経済成長、これのお陰で今の生活を享受できる。とっても有り難い事です。今や日本は世界のトップクラスです。日本人の勤勉さは、それに拍車をかけて、完璧を求めた。そのお陰で、品質は向上し、壊れない、物事は正確に動く、電車は時間通りに来る。そういう事が実現しました。世界に類の無い、すごい国です。欧米では、同じ先進国でも、日本と比べるといいかげんな所が随所に見られます。電車は時間通り来ない。物は壊れるもの、とことんつきつめない。完璧を求めない。日本人はその勤勉さで完璧を求めています。

欧米人は悪く言えばルーズ、良く言えばおおらかです。遊びというのは、このおおらかな気持ちの中で芽生える。その欧米人にしても、物が壊れないのは大歓迎ですから、壊れない日本製の車と家電を使いながら、気持ちはおおらかに過ごす。日本人はより完璧を目指して、今日も働く。欧米人は日本人は働きすぎと叫び、日本人は良い製品作って何が悪いという。どっちが良いという問題でも、正しいという問題でも無いのですが、ここで、日本人の心の中に豊かになったけども、心の豊かさには満足していない。こういう気持ちが芽生えてきた事実。これは見逃すわけにはいきません。日本はターニングポイントにきているのかもしれません。そしてバブル期にいろんな遊びをしてきた。でも、それがはじけて、再び元に戻ろうとしています。

物質的豊かさは欠かすことができない。しかし、それだけでは心の豊かさを享受できないので、ちょっとだけスローにする。スローライフというのが、イタリアでしたっけ出てきたのは、元々彼らはスローライフの享受者なので、本当は日本に出てくるべき言葉ではないかと思います。スローにして、周りを見渡す余裕を持って、その分を心に使う。それは遊び文化の概念を考えなおす。遊びは悪でもなければ、敵でも無い。心を豊かにさせる潤滑油でもある。それは頭で解っている。でも、心で解る必要がある。

これからの日本人は、その基本に持つ勤勉さをそのままに、より向上心を持ち続け、でも、完璧にはならないというおおらかさも合わせ持ち、物心両面の充実を図る。仕事も生きがいをもって、働く。遊びもおおいに楽しむ。このふたつをうまくかみ合わせる。日本人スタイルの遊び、欧米の遊びをそのまま受け継ぐのでは無く、うまく自分達に合わせた遊びのスタイルを持つと、みんな幸せになれる。今、そういう時期にきていると思います。遊びを模索している時期だと思います。

一方、経済は実力主義というスタイルになってきています。小泉さんも頑張った人には、それなりの報酬を、と格差社会に賛同してある。でも、世の中お金儲けのうまい人と、別の分野で長けている人が居る。ならば、お金儲けのうまい人はどんどん稼いでもらって、同時に精神的豊かさも追求する為にどんどんお金使ってもらって、一方、遊びのうまい人は、彼らをどんどん遊ばせて上げると良い。もちつもたれつの社会ができる。稼いだ人は使わなければなりません。同時に、政府はそういう方々が溜め込まなくても使える社会を造ってもらいたい。

遊びは悪、仕事は善という分け方を少しづつ変えて、遊びは善、仕事も善、どちらも必要で善であるという認識になる事が必要です。そうしますと、一生懸命仕事して、一生懸命ヨットで遊ぶ。これで日本人は物質的に、精神的にも豊かになれる。そのバランスを取る。そうなってきますと、日本にもたくさんのいろんなヨットが入ってきますね。日本にある造船所も活気づく。そうなると私も儲かりますね。笑いが止まらなくなるかもしれませんね。でも、解ってます。儲かった分使います。世の中はもちつもたれつ、いろんな人が居て、それぞれの得意な事して、支えあって社会がなりたつ。理想の社会。

まあ、それは良いんですが、とにかく、遊びに対する意識を改めて、もっとおおらかに生きましょう。
そうすれば精神的にも豊かになる。より良い製品を作るという事は良い事です。でも、それが完璧主義になって、仕事は留まる事を知らない。それだけなら良いですが、精神的に豊かで無いと気づいた事から、問題が発生する。この両方をうまく両立させられれば、日本は世界のモデルにもなる。昔、アインシュタインは言いました。世界を救うのは日本人であると。

日本人がエコノミックアニマルとかつて呼ばれましたが、一生懸命働くのは良い事です。でも、遊びを悪と呼んだのがいけません。遊びも善です。そうしますと、誰も日本人をエコノミックアニマルとは呼ばないでしょう。世界の模範みたいな国になれる。世界に貢献しますね。人間に勤勉さを植えつけるより、遊び心を植え付け方が遥かに楽でしょう。楽しい事なんですから。こんな国民は日本以外には有り得ない。すごい国になる。

ですから、どんどん遊びましょう。でも、むちゃくちゃ遊んではいけません。節度が大切ですから、ジェントルマンのように、日本人は武士道精神をもって、遊びましょう。それでヨットを買って、その中から技術だけでは無く、精神も学ぶ。日本人の遊びは精神性にある。技術さえ高ければそれで良いとはしない。武士道精神が生きている。それが欧米人とは違うところです。ここも勤勉さが光ります。でも、面白いのです。

武士道精神は、例えば、大金儲かった方が、しょうもないヨット買ってはいけません。良いヨットを買うんです。そして、それを見て買えない人は目の保養をし、良いヨットという物を学び、それが中古になったら買えるようになる。みんなの為に良いヨットを買う必要があります。そしておおらかでなければなりません。姑息な事をしちゃいけません。贅沢じゃないんです。みんなから稼がせてもらったので、お金使って、みんなに還元していく。これが現代の武士道精神です。尊敬すべき精神です。

さあ、良いヨット買いましょう。遊びましょう。学びましょう。どうです?でかいヨット大歓迎、小さいヨット大歓迎、外洋艇も大歓迎、デイセーラーも大歓迎、シングルもダブルも大歓迎です。ただ、キャビンヨットは社交の道具ですから、できる人は大歓迎、でもしない人は社交ヨットはいけません。
セーリングを追及しましょう。技術だけでは無く、精神も学ぶ。これが日本人らしい。遊びに精神を持ち込むのは変ですが、面白さを追及していく時、日本人には良い。道の世界。ヨット道です。

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