第三十三話 ヨットを永く遊ぶ

ヨットは世間の流行とか、そういう流れでやるような物ではありません。始めるからには、長くやる。一生やり続けるとか、2,3年でやめてしまう方もおられはしますが、できれば永く続けていってもらいたいものです。でも、始めたからと言って、誰でも永くできるかと言いますと、そうは行きません。
基本的に面白いものである事が必要です。修行するわけじゃないんですから、面白く無いものは続きません。ヨット所有暦何十年とかいう方もおられますが、所有しているだけでは続けている事にはならない。経費が出て行っているだけでは面白く無い。やはり、できればヨットをやって、積極的に乗って、永く乗っていただきたい。

例えば、映画が好きな方。自分では何もしなくても、ハリウッドはせっせと新しい映画を製作して、見せてくれます。こちらは、お金を払って、座席に座っていれば、それだけでいろんな映像が見れて楽しい時が過ごせます。次々にいろんなジャンルの映画を簡単に見れます。非常に楽で楽しい。

でも、ヨットはと言いますと、スポーツ全般にそうですが、自分が主体的に動かないと何も楽しい物を見せてはくれませんし、体験させてくれません。受身で居るとどうしても変化が現れにくいので、マンネリ化し、面白くなくなります。ひとつの映画を何度も繰り返し見るようなものです。それがどんなに楽しかったとしても、何度もみるとあきてしまいます。ですから主体的に動かなければなりません。自分が動くと周りも動く。その事によってのみ、いろんな映画を見る事ができる。一生続けるには、何十年か続けるには、やはり、自分で変化を起こして行かなければ続けられるものではありません。遊ぶのも楽じゃないんです。一生続ける為に面白くするというのでは無いですね。面白いから一生続けられる。でも、やっぱり面白くする演出も自分でしないと、ハリウッド映画のように、向こうが勝手に次から次に演出してくれるわけじゃない。

地域によっても違うとおもいますが、春と秋はセーリングには最高の季節、冬は寒いですが、九州は結構乗れます。問題は夏です。夏はオフシーズンですので、サンセットセーリングがお奨めです。北の地域では多分、夏と冬が逆でしょうね。年間を通して、いかにセーリングを気軽にするかからスタートして、合間に宴会も入る、ファミリークルージングも入る、ちょっと遠出も入るかもしれません。でも、この中でヨットを面白くする最大の要因は、日常のセーリングが面白いかどうかです。
宴会は楽しいに決まってます。ファミリーセーリングも楽しいに決まってる。でも、これらは年にほんの数回しかしない特別なイベントですから、特別なイベントは楽しいで良いのですが、日常は面白いというセーリングをすると、使える回数は増えてきます。これが面白いと一生続けられる。

セーリングは主体的でなければなりません。それが面白いに繋がる入り口です。その入り口から入ってより面白くする為に、そのチャンスを広げるのがシングルハンド、デイセーリングを主にするという事です。いつ出て、いつ帰る、どっちに行く、どんなセーリングをする。みんな自分で決めます。したい事をします。面白いと思う事をします。そして、いろいろ試す。そうするといろんな場面に遭遇しますね。それはいろんな映画を見るのと同じで、いろんな変化が現れる。ハリウッドが作るのでは無く、自分で作る。中にはつまらん映画もあるし、スリル満天もあるし、ロマンチックあり、快走
あり、退屈あり、でも、全部自分で作ったものです。自分で作って、自分で主役し、自分で演出し、自分で見る(体験する)。全部自分でやります。それが面白いものなら一生続くでしょう。それをやらなければずっと同じ映画を見る事になります。これでは続けられないのは当たり前です。一度見た映画がつまらなかったとしても、すぐに諦めてはいけません。また、別の脚本を書いて、実行してください。きっと必ず面白くなると思います。

大きなキャビンに入って、エアコンつけて、良い気分。これも映画のひとつ。でも、そのままでは何の変化も無い。これに変化をつける演出というのは相当難しい。ならば、セーリングの方が簡単です。変化はたくさんあります。自然条件が設定されますが、いつも変化してます。最初はその変化についていけないかもしれませんが、慣れてくると変化についていけるようになる。そしてついていける範囲がどんどん広がる。そこが面白くなるんでしょうね。

キャビンヨットでも良い、ビッグボートでも良い、スモールでも良い、どうやって演出できるかですから、自分に合えば良いわけです。後は自分次第、さあ、どうやって演出していきますか?その演出の為にはどんなヨットが合うでしょうか?その演出か現実的でしょうか?今、可能な事でしょうか?
シングルハンドのデイセーリングが全てとは言いませんが、少なくとも最大公約です。ここから始まって、一生かかっても見れないぐらいたくさんの映画があります。もちろん、ここから出て外洋に行っても良い。ナビゲーションという映画が見れる。大海が見れる。でも、また再びデイセーリングに戻ってくる。

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