第三十話 メリット、デメリット

マリーナに居ますと、今出れると良いセーリングができるだろうなという時があります。シングルハンドヨットの良さは、そういう時にすぐに出れる事です。それがどれだけ大事な事かと思います。

ヨット自体がシンプルです。これは自分のヨットを隅から隅まで把握する事が容易にできます。そしてメインテナンスが簡単になります。自分のヨットを熟知してますから、何があっても対応は的確になります。

帆走がシングルで容易ですから、ヨット未経験者を招待した時も、何ら慌てる事はありません。ゲストにも充分楽しんでもらう事ができます。これはセーリングでの接待、ご馳走接待ではありません。ゲストがヨットに来て、ご馳走を期待するより、セーリングの世界を期待していると思います。

気軽ですから、半日セーリングでも面白いセーリングができます。午前と午後と2回出した事もあります。重心は極めて低いので、安心ですし、より大きなセールが展開できる。という事はリーフ時期に余裕があります。

大きなメインセールと小さなジブセール、タックが容易です。デイセーリングではタック回数が多くなりますので、その度に大きなジェノアをかえすのは結構疲れますが、こういうヨットは容易だし、セルフタッキングなら、なおさらです。

帆走のドライブ感を容易に堪能できる。セーリングの真髄はこのドライブ感にありますから、舵を握って、シート類のコントロール、舵を伝わる感覚や船体の動きの感覚、これが面白い。それを容易に味わう事ができます。

船体デザインは人間がキャビンの中で立つという事は考慮されてないので、プロポーションとしては美しい。美しいヨットという存在感があります。

一方、デメリットも書いておかなければなりません。それは何と言ってもキャビンが狭いという事です。重心が低いという意味ではメリットになりますが、キャビン側から見ますと天井が低いので、キャビン内をうろうろするにはちょっとしんどいです。それに大勢で鍋でも囲んで宴会するという事にも無理があります。

大量の荷物を積み込むというのにも無理がある。スペースが少ないですから。ですから、外洋なんかには行けません。でも、コースタル程度なら問題は無い。

ギャレーはシンプル、大勢呼んでたいそうな料理を作るには至らない。ピザの出前でも取る事、それにキャビンは狭いので、大勢ならコクピットを利用する事になります。でも、キャビンより気持ちが良いと思いますね。

エアコンが無いので、夏真っ盛りの時はキャビンなんかには居られません。

キャビンヨットでできる事は、まさしくキャビンの快適使用です。広々としたキャビンは家族全員で泊まるにはもってこいです。エアコンも効いてますので、真夏でも快適です。ご馳走造って、家族で楽しむ、家族団欒、仲間を呼んで宴会、ちょっと遠出して、みんなでホテルに行く必要も無い。すべてまかなえます。海水浴でもシャワーを浴びる事もできる。そういう使い方には抜群の快適さです。

家族やクルーが居れば、セーリングもできます。ただ、ちょっとそのドライブ感は異なるでしょう。でも、セーリングよりキャビン中心ですから、それで良い。大きなエンジン積んでますから、ちょっと遠出にもすぐにいける。冷蔵庫あり、冷凍庫あり、電子レンジあり、テレビあり、ステレオあり、何でも有りなので、キャビンは家に居る時と同じように快適です。

一方デメリットは、セーリングが容易では無いという事、重心が高いという事、機器類が多いのでそれらを把握するのは容易では無いし、電動が多くなるのでバッテリーの心配も出てくる。ですから、メインテナンスも大変になる。家と違って、潮風にさらされ、乗ればあっちこっちにストレスを受けるヨットですから、ほっといたらどんどん壊れます。壊れなくても錆びてきたりします。それで、メインテナンスはより重要になる。でも、それに値する程の快適性がある。でも、よっぽどヨットに普段から拘わっていないと、なかなか隅々まで把握する事はできません。

全てをこなすというのは無理な話で、何でもメリット、デメリットがあります。それで、自分の重要視したいスタイルを考えて、それを優先したヨットにする事が重要かと思います。

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