風について

風は移ろいやすい。そこら一面で均等に吹いているわけでは無いし、島などがあれば、風はその影響を受けますし、部分的なブローもあります。また、風速だけでは無く、風向さえも、どんどん変わります。この風の変化があるから、ややこしくもなりますし、面白くもなります。

風速は秒速何メートルというあらわし方と、時間あたり何ノットという言い方もあります。10ノットの風の場合、1ノットが約1.8km、それの10倍ですから、時速18kmという事になります。これを秒速に変える為には、60で割って、分速、もう一回60で割ったら秒速ですから、18kmは18、000m÷60÷60=5mという計算になります。つまり、10ノットの風は5mの風速、と丁度半分と考えてください。20ノットなら10mです。

さて、風速は変わる、風向も変わる。そして上下の高さにおいても、風は変化します。海面近くの風とマストトップの風は異なります。上の方が少し速くなります。そして、もうひとつ。この風に対して、ヨットが走りますので、見かけの風が加わるという事になり、それが少しややこしくします。

ヨットが停止状態であるなら、海面近辺の風速よりマストトップ辺りの風速が速いにしても、ヨットに吹いてくる角度は、上から下まで同じです。しかし、ヨットが走り出しますと、走る事によって起こる風が加わりますので、それが風速の違いによって、見かけの風の風向が違ってくる事になります。

見かけの風は真の風プラス、ヨットが走る事によって起こる風で、合計されて風速は速くなり、風向は、真の風より前側から吹いてくる事になります。この時、真の風は海面辺りの風より、マストトップ辺りの風の方が速いので、海面辺りの見かけの風の方が前側に周り、マストトップ辺りの見かけの風は、それより少し後ろ側から吹くという事になります。

ちょっと解りにくいと思いますが、真横から風を受けている時、ヨットが前進しますと、風が斜め前側から吹いてくるようになります。そして、マストトップあたりは、真の風のスピードが速いので、斜め前側からと言っても、下部ほど前には回らない。もし、下部が横90度から吹いてきているとして、ヨットが前進しますと、下部は70度前から吹いてきても、マストトップあたりは75度ぐらいとかそういう意味です。

つまり、ヨットが走り出しますと、下部と上部では、風のヨットにあたる進入角度が異なる事になり、下の方が前に回るという事になりますので、セールの風に対するセット角度も、下側より上側の方が少し開く事で、上から下まで、風の進入角度に対しては、同じになるという理屈です。これをツイストと言います。セールをねじるわけです。

例えば、ブームを中央にセットした。目一杯シートを引き込んだら、リーチはピンと張ります。それでは下部から上部まで角度が同じになりますので、シートをちょいと緩め、するとリーチが少し開きます。これだけだとセールの角度も落ちますので、トラベラーでちょいとブームが中央になるまで引き上げる。そうする事によって、上部は少しリーチが開きます。これで、見かけの風向に対して、下から上まで、セールを同じ角度にしようという事です。もちろん、風が強くなったら、このセールのねじれをもっと大きくして風を逃がす事になります。

さて、風はいつも変化する。風向も風速も。それにセールを対応させて、最適なセーリングを堪能する。それがヨットの最大の醍醐味です。それも完全にぴったりにしなくても、どの程度までやるかはオーナー任せ。自分で決められます。風速が変われば、取り込み量の調整、風向が変われば、セール角度の調整。まあ、真剣にやりますと結構忙しい。

前に舵操作で真っ直ぐと書きました。しかし、風向が変わればどうなの?風向が変われば、セール角度を変える。そういう走り方です。ではもうひとつ、風向が変われば、舵操作で、同じ風向になるように、ヨットの走る方向を変えるという方法もあります。そうしますと、風向は常に同じ角度でヨットに吹いてきますから、風速が変わらない間は、セール調整は不要という事になります。その代わり、舵操作で常に風向にあわせる事になります。

つまり、風向の変化に対して、セールを合わせるか、ヨットの進行方向を合わせるか、どっちかです。それは走らせ方の問題です。遊び方の問題です。でも、どちらにするにせよ、観察する事が重要になります。

上りギリギリで走っていますと、風の吹く方向が少し右や左にずれるのが解りやすいと思います。例えば、左舷から風を受けて、上りギリギリで走っている場合、風が左側にずれますと、ヨットが走る方角は、もう少し左舷側に上れる事になりますし、逆に、風が右側にずれますと、ヨットには今まで走ってきたコースでは、セールの裏に風が入りだし、そのコースでは走れなくなり、少し右側に舵を切って、風の角度に合わせる事になります。

ヨットが走るコースを一定にして、風向が変わるのに対して、セール角度を変える方法と、セールは扱わずに、舵で、風向に合わせていく走り方とある事になります。基本的には、上りギリギリコースでは風の変化に対して、舵操作で同じ角度を保ち、その他のコースでは、セール角度を合わせる事で、走る角度をキープする事になります。

そして、風速が変わるなら、セールのドラフト等の形を調整していく事になります。風向も風速も常に変化していますから、それに対してどこまで合わせるか?その深さこそが、セーリングの深さという事になると思います。

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